2022年7月8日、安倍晋三元首相が7月10日に投開票を控える参議院選の応援演説中に銃撃され死亡した。67歳だった。
安倍元首相は、連続在職2822日、第1次内閣を含めた通算在職3188日の実績を持ち、日本の首相100代64人中いずれも歴代最長である。
日本は今、IR(カジノを含む統合型リゾート施設)整備に向けいよいよ大詰めの段階にきている。大阪府・市と長崎県がIR誘致の区域整備計画を国に申請しており、国の審査・認定を待っている。
この国策によるIR整備実現に尽力してきたのが、凶弾に倒れた安倍元首相だ。
IRについて議論が始まったのは、第一次安倍内閣と第二次安倍内閣の間の民主党政権時代(2009〜2012)。2011年に設置された「統合型リゾート・カジノ検討ワーキングチーム」において議論が始まった。これは日本IRのコンセプトになっていると言われているシンガポールのマリーナベイ・サンズが全面開業した時期と重なる。
2012年12月、自民党は再び政権を取り戻し、第二次安倍内閣がスタートする。
2014年には安倍首相自らマリーナベイ・サンズを視察し「(訪日外国人観光客を)1,000万から2,000万人に倍増する目標を、2020年のオリンピック・パラリンピックまでに達成したいが、こうした施設は日本の成長戦略の目玉になる」と述べ、同年6月に閣議決定された「日本再興戦略(成長戦略)」にIRの検討を盛り込んだ。
第三次安倍内閣下の2016年12月には、IRの設立を推進する、いわゆる「IR推進法」が成立。IRを「観光振興や地域活性化につながる施設が一体的に整備された区域」と定義し、「適切な国の監視と管理のもとで、民間事業者が運営する」と規定した。これは日本では禁止されていたカジノを認める初の法案となり、日本IRの実現に向け大きな一歩を踏み出した。
2017年3月に政府は安倍首相を本部長とした「特定複合観光施設区域整備推進本部」を立ち上げた。そして、第四次安倍内閣下の2018年7月にはいわゆる「IR整備法」が成立。同法はその目的として「カジノ事業の収益を活用して地域の創意工夫及び民間の活力を生かした特定複合観光施設区域の整備を推進することにより、我が国において国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現する」、つまり「カジノ事業の収益を活用して、その周辺の区域の整備をしようとするもの」であるとしている。また、入場回数や入場料、事業者に対する納付金などについても言及されており、このIR整備法に沿って、2019年12月には国土交通省が最大3カ所の整備地域を選定する基準を盛り込んだ基本方針を公表し、2020年1月にはカジノ管理委員会も設置された。
2020年に入ると、世界は新型コロナウイルスの脅威に直面し非常に困難な時代を迎えることとなった。同年9月、安倍首相は持病(潰瘍性大腸炎)の悪化を理由に辞意を表明。連続在職日数2822日目にして首相を辞任した。その後を引き継いだ菅義偉首相はコロナ禍の中、政権を運営。続いて2021年11月には岸田文雄氏が首相となる。コロナ禍の影響で認定申請期間が当初の予定から9か月ずれ込み、2021年10月1日~2022年4月28日までとなったが、基本的な方針については共に従前を堅持し進めてきた。
安倍元首相が描いていたIRは、自身の目で見ること叶わず亡くなられてしまった。だが、彼の意志は引き継がれている。国によるIR区域の認定は今年中とも言われており、2020年代後半には日本IRが開業する見込みだ。
ご冥福をお祈り致します。