衝撃が走った。和歌山県が誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)計画で、運営事業者に応募していたマカオの「サンシティ・グループ」が辞退したことを受け、県IR推進室の幹部は13日、iagの取材に対し「突然のことで驚いているし、非常に残念だが、現在、選定手続き中のもう1者の最終審査を進める」と答えた。春ごろとしていた優先権者の選定時期については「少し遅れているが、変えるつもりはない」とも話し、近く公表する方針だ。
サンシティグループホールディングスジャパン(東京)は、アジアでカジノ関連事業を展開している香港の「サンシティ・グループ」の日本法人。今年1月15日に締め切られた県の公募にカナダのIR投資会社、クレアベストグループの「クレアベストニームベンチャーズ」(東京)とともに参加していた。
昨秋には和歌山市内に事務所をオープン。地元のバスケットチームをサポートするなど、地域貢献活動に力を入れていた。今月5月1日には県内の民間企業100社でつくるIR推進協議会に同社の大原勝義代表取締役が出席し「食べ物や自然、歴史な和歌山だから伝えられる良さがある。IRをやるなら和歌山しかありえない」と話し、提案書類を提出した外資系2者のうちでは有利とみる向きもあった。
しかし、12日になって方向転換。新型コロナウイルスの感染拡大が業界に甚大な影響を与えていること、国内のIR区域認定手続きが当初の予定より時間がかかる見通しであることなどを理由に撤退を宣言していた。
県は弁護士らでつくる選定委員会による審査などを経て、2021年春ごろに事業者を決め、26年春ごろまでに和歌山市毛見の人工島「和歌山マリーナシティ」でのIR開業を目指すとしているが、不透明になったと言わざるを得ない。
今後について、県の担当者は「残る1者についての選定手続きをして、選ばれるのか選ばれないかの二者択一になる。その場合、透明性を示すための資料と合わせてすみやかに公表します。決まった場合は次のプロセスに進む。そうでない場合は仮定の話になるのでお答えできません」とした。クレアベストニームベンチャーズは今回の件についてコメントを出していない。
県はIR誘致の計画に変更はないとしており、このままクレアベストが優先権者となるのか、それとも再公募という形を取るのかが今後の焦点となりそうだ。