ドナルド・トランプ大統領が火曜、「WeChat Pay」や「Alipay」など8つの中国系決済アプリを禁止する大統領令に署名したことで、マカオの3社の米カジノ事業者がさらなる逆風にさらされる可能性がでてきた。
テンセントのメッセージアプリ「QQ」や決済アプリ「QQ Wallet」なども名指ししている今回の大統領令によって、米国を拠点にする人や企業と、これら8つのアプリとの間の取引が禁止される。また、AppleやGoogleなどの企業にも、米国のアプリストアからこれらアプリを強制的に排除するよう求めることになる。
トランプ大統領の大統領令には、「香港やマカオ(中国)を含む中華人民共和国にいる人物によって開発またはコントロールされている接続された特定のモバイルおよびデスクトップアプリとその他のソフトウェアが米国で広がるペースと広汎性が、継続して米国の国家安全保障、外交政策および経済を脅かしている」と書かれている。
次期大統領のジョー・バイデン氏が大統領に就任してから約1か月後まで実施されないことを考えると今回の命令が実施される保証はない。米法の下で、バイデン氏は、別の大統領令を発することで既存の大統領令を無効にする力を持つ。
また、トランプ大統領が昨年8月に出した「WeChat」と動画共有アプリ「TikTok」を禁止する同様の命令を出しており、それに関する法的な問題への回答もまだ出されていない。それらの命令は、「WeChat」の所有者であるテンセントと「TikTok」の所有者、ByteDance、およびアプリの使用者自身からの複数の訴訟を受けて、米連邦裁判所が停止している状態だ。
しかしながら、今回の大統領令が通れば、マカオにある米企業所有の事業者、サンズ・チャイナ、MGMチャイナそしてウィン・マカオにとって重要な意味あいを持つ可能性がある。
マカオにある法律事務所MdMEの特別弁護人、ビクトリア・ホワイト氏は、IAGからの問い合わせに対して、「今回の大統領令の焦点が、アメリカ人の個人および専有の情報の保護であると同時に、米国の法律の管轄の下にある海外支店を含むあらゆる法人による中国の決済アプリとの一切の取引が禁止されることになる。
今後米商務長官には、大統領令の下で禁止されている取引及び中国系ソフトウェアアプリ開発会社の特定というタスクが与えられており、これは将来の影響に関して注視しておく必要があるだろう」と説明した。
IAGが話を聞いた他の人々も、トランプ政権がプライベートセクターが政治的目標を達成することに対して積極的に対処するつもりであることを考えると、マカオの米事業者に潜在的な地政学的リスクがあること、そして中国による報復傾向の増加を警告した。
メルコリゾーツ&エンターテインメントのマカオリゾート最高執行責任者であるデビッド・シスク氏は、トランプ大統領が「WeChat」を禁止する命令を発令した後の昨年8月、「それを排除するという声明を出すことはある種愚かなことだ。10億以上の人がいて、WeChatがコミュニケーションを取るための基本デバイスであり、また、多くの取引も行われる最も主流のデバイスでもある。
当社のマーケティング担当者たち、ここにいる全員がWeChatを使っている。つまり、ここのマーケットで最も広く普及しているコミュニケーションツールだということだ。外に出て、WeChatを通じて顧客と話をする方法に関して、非常に上手い人材がいる。
彼らはWeChatを通じて顧客に日々のあいさつをする。動画を送り、音声メッセージを送る。全てがほぼWeChatを通じて完了する。全てのソーシャルメディア、全てがそれを通じて入ってくる。つまり、それ無しでここで生きる方法はないということだ」と話した。
マカオのCA Lawyersのパートナー、ホセ・アルバレス氏は、次期バイデン政権が2国間関係の修復に取り組むことが極めて重要だと述べた。
同氏は、「(関係修復が)失敗すると見込むことは、双方がさらに頑なになることを意味する可能性があり、それが(マカオにまで)波及するリスクがある。思いに耽ってはいけないが、マカオは中国の必要不可欠な一部だ。
しかしながら、それはマカオにとって理想とはほど遠い。というのも我々はここで繁栄している多文化環境の結果、、多くの面において、ビジネスの考え方の違いがあることから恩恵を受けている」と述べた。