横浜市議会は24日、一般会計で1兆7,400億円の2020年度予算案を可決した。焦点のひとつとなるIRの推進に4億円を計上。横浜市は20年度からIR事業者の公募や政府に申請する区域整備計画の策定といった誘致作業を本格化させる。ただ反対論は根強く、市民団体は誘致の是非を問う住民投票を求める署名活動を始める。日本経済新聞などが伝えた。
予算案は自民、公明両党などの賛成多数で可決。子育てや福祉に重点配分したほか、市が進める新たな劇場整備も2億円計上した。
横浜市は19年8月の林文子市長によるIR誘致表明後、住民説明会などを実施してきた。市は12日に公表した「実施方針案」について4月上旬までの意見募集(パブリックコメント)を踏まえて、6月に実施方針を策定する。20年度内には開発・運営業者を選ぶための選定委員会でIR事業者を公募し、選定する予定だ。
予算案は可決されたものの、依然としてIRへの慎重論は根強い。誘致に反対する第2会派の立憲・国民フォーラムは「課題を解決する予算と評価している。IRは到底認められるものではない」と関連予算の削除を求めていた。議場では傍聴人が「市民をばかにするな」などと怒鳴り声を上げた。議長が退席を命じるなど混乱し、議決直前に議会が一時中断する場面もあった。
横浜IRをめぐってはラスベガスサンズ、ギャラクシーエンターテインメント、メルコリゾーツ&エンターテインメント、ウィン・リゾーツなどが参入する意向を表明している。20年度に実施する事業者の公募にはこれらのIR事業者や国内の開発業者セガサミーも応募する見通しだ。
ただ、新型コロナウイルスの感染拡大でインバウンド(訪日外国人)が急減し、世界的に景気も悪化。東京五輪・パラリンピックの開催が1年程度の延期が決まるなど、取り巻く環境は激変している。
東京都はIR誘致を検討しており、横浜にとって東京五輪の延期はある意味で「追い風」となりそうだが、景気悪化が続けば、海外のIR事業者や国内の不動産・観光業界などが積極投資に動けるかなど不確定要素が増えかねない。
IR誘致を目指す横浜市においては、安定運営が可能な事業者の選定や、民間投資を呼び込める環境をいかに整えられるかが重要となる。