問題を抱えるオーストラリアのカジノ大手クラウン・リゾーツは、新型コロナウイルスによる施設閉鎖や3つの州にまたがる規制当局の調査の影響を大きく受け、2021年6月30日までの12か月間で2億6,160万豪ドル(約210億円)の損失を計上した。
同社の21年度の売上高は、前年比31.3%減の15億4,000万豪ドル(約1240億円)となり、利用客数が制限されたクラウン・メルボルンとクラウン・シドニーでは、EBITDAが77.4%減の1億1,410万豪ドル(約91億5,000万円)となった。
長年の旗艦施設であるクラウン・メルボルンは、新型コロナによる複数回のロックダウンのため会計年度中160日間が閉鎖され、ほとんどの営業日で利用客数が制限。その結果、売上高は64.0%減の5億7,870万豪ドル(約464億円)となり、そのうちメインのゲーミングフロアの売上高は前年同期比54.3%減の4億690万豪ドル(約326億円)となった。
王立委員による同カジノのカジノライセンス保持の適正調査で主な焦点となったVIPプレイは、前年の3億5,230万豪ドル(約283億円)に対し、わずか60万豪ドル(約4,820万円)しか貢献しなかった。同社は、2020年11月にアジアのジャンケットプログラムに終止符を打っている。
クラウンが22億豪ドル(約1,770億円)を投じて開発したクラウン・シドニーでカジノ事業を開始するのに適していないと2月に判断されてから、ニューサウスウェールズ州独立酒類・ゲーミング局との交渉が続いている。
2020年12月28日にオープンした非ゲーミング事業の売上高は6,860万豪ドル(約55億円)だったが、報告されたEBITDAはクラウン・シドニーのアパートメントの売却益により1億2,300万豪ドル(約98億7,000万円)であった。
「ゲーミングエリアは、カジノの規制当局による適正の判断を待って、段階的にオープンする準備ができている」と同社。「同エリアで働くために採用された従業員は、クラウン・シドニーがゲーミングの運営開始に向けて確実に準備を整えておけるよう、1年を通してスキルの向上と多くのシステムのテストを続けてきた」。
クラウン・パースは年間を通じてわずか27日間しか閉鎖されなかったものの、売上高が21.9%増の7億4,310万豪ドル(597億円)、EBITDAが46.3%増の2億5,440万豪ドル(約204億円)となり、前年同期比で増収を記録した施設となった。VIPの貢献はわずか70万豪ドル(約5,620万円)で、メインのゲーミングフロアからの4億7,830万豪ドル(約384億円)の売上高は、再び国内市場が牽引した。
ベッティングエクスチェンジのベットフェア・オーストラレーシアとソーシャルゲーミング事業のDGNゲームスからなる同社のオンラインゲーミング部門クラウン・デジタルの売上高は、8.5%増の1億4,700万豪ドル(約118億円)となった。クラウン・リゾーツ、メルボルンとシドニーのカジノ閉鎖で21年度は約210億円の損失に転落
同社は、21年度の最終配当は行わないとしている。