長崎県が佐世保市のハウステンボス隣接地に誘致を目指すIRのRFPプロセスについて、先日、IAGが長崎県へ向けた質問への回答に続き、今回、県に選定されなかった2者であるOshidori International Development合同会社(以下オシドリ)とNIKI Chyau Fwu (Parkview) Group(以下NIKI)に関する扱いについて、衝撃的な詳細が明らかになった。
オシドリとNIKIの両者は、長崎県から「廉潔性調査に懸念がある」と言われたことを公表していたが、長崎県は、それらの懸念が何なのかを明らかにはせず、長崎県が廉潔性調査を委託した調査会社についても明らかにしなかった。両者は、公募からの辞退をするか、もしくは辞退しなければ廉潔性調査の結果を公表すると「提案」されたと主張している。
オシドリ
IAGと直接話したスポークスマンは、「長崎県は、不当行為を隠蔽するために嘘をつくしか選択肢がない。長崎市民の皆さんがより良いIR、より良い行政と共に歩むに値する人々にも関わらず、非常に残念に思う」
「長崎県は、最終プレゼンテーション前に、審査委員の目の前で(廉潔性)調査の結果を公表されたくなければ、(公募プロセスから)辞退したほうがよいと強要してきた」と主張している。
オシドリは辞退することを拒否し、2021年8月4日に審査委員会での最終プレゼンテーションに参加した。
2日後、オシドリは公募からの突然の撤退をプレスリリースで発表したが、実際には撤退してはいないとの解釈もできる。プレスリリースでオシドリは、「長崎県が課すIRにおける開発・運営上のルールを改善せず、RFP(公募・選定)プロセスが倫理的かつ公平公正に実施されない限り、長崎IRのRFPへの参加を取りやめる」と述べており、単に撤退を示唆しているものであった。
長崎県は、オシドリは撤退していないとの見方をしたようで、優先交渉権者発表時に、オシドリの得点は682.8点と評価している。これにより、オシドリは697点で最終選定されたカジノオーストリアに次いで、次点となった。NIKIは667.1点の3位であった。
IAGがオシドリに、長崎に強要されたという主張に関する証拠について聞いたところ、スポークスマンは、「代理人弁護士と県とのやり取りはあるが、機密保持契約の対象となっている」と話すにとどまった。
オシドリは、県が主張する「懸念事項」について、県が「機密事項」を理由に公表を拒否していると訴えており、今回オシドリのスポークスマンは「長崎県の人々に、県が行った茶番劇について見ることができるよう、我々のプライバシーの権利を放棄することに同意する」と述べている。
NIKIパークビュー
IAGは、NIKIと長崎県が7月12日と27日に行った会議の議事録をある情報筋から入手し、内容を確認した。この会議は8月4日に行われた最終プレゼンテーションの数週間前に開かれたものである。IAGが議事録の信ぴょう性をNIKIに確認したところ、本物であることが確認された。
この議事録は非常に興味深い内容であった。長崎県はNIKIのグループに関する「廉潔性の懸念についての情報」があると主張しており、県からNIKIに対して、今後の3つの可能性が示された。1つ目は、NIKIが(懸念事項について)説明し、懸念を払拭できた場合には通常通りに審査を行う。2つ目は、(説明しても)懸念が払拭できなかった場合には、審査結果発表で廉潔性調査の結果について公表する。3つ目は、7月30日までに公募から辞退する場合、廉潔性調査については公表せず、辞退についてのみ公表する、とNIKIに提示された。
NIKIは、コンソーシアムに関する多くの情報を提供することにより、懸念を払拭しようとした。それらの情報は長崎県より調査会社に共有されたが、7月27日の会議の議事録には「廉潔性調査の結果は変わらなかった」とある。この事により、NIKIには辞退するのか、廉潔性調査結果の問題点を公表するかの2つの可能性しかなくなった。
7月27日の会議の議事録では、長崎県がNIKIの主張を検証しているように見え、そして「もしご辞退されるようなことがあればですね、私どもとしては、廉潔性調査の結果は公表せずに、ご辞退の事実を受け止めるというで考えております。7月30日までに特にそういったことございませんでしたら、最終的な発表の時に、廉潔性の調査の結果、選択できなかったということを公表させていただき、県の結果として発表させていただくこということで今考えております」とある。
会議にはNIKI側からは弁護士、NIKIの代表取締役であるDr.Ku Shinを含むNIKIの代表が出席している。会議に参加しているNIKI側の関係者は、長崎の公募プロセスに対して非常に批判的な意見を出しており、それらの意見は以下にある議事録から抜粋されたものも含まれている。
「(廉潔性の懸念について)判断を実質的にされているのがコンサルタントであり、そのコンサルタントの方は、会社名名称、どのような実績があるのかとか、その分析の理由についてもお示し頂いていない。(中略)これは率直な所、きわめて基準としては手続きの適正さとしては低いと言わざるを得ませんし、このようなことが進んでいるということは私どもは信じがたいと考えている」
「手続きは不透明である。適正な手続きの基準を満たしていない。いわば公開しますという脅威にさらされた中で”きわめて不適切な”そういったイメージを作り出す」
「プロセスが公平また公正であるとは信じがたい」
「この第三者(調査会社等)の能力というのが実績として不十分であるか、不適切であると考えられる」
「強い会社であればあるほど何かを隠すということはありません」
「素晴らしい場所において、世界においてLeading IR、有数のIRを作ることができると信じていたこともありますので、きわめて残念です。このほか詳細な情報があれば、私どもとしても提供させて頂きたいと思いますが、そうでなければ私どもとしてはどういった法的手段がこの手続きの中で可能なのか、私どもの弁護士と相談しながら検討していきたいと思います」
「非常に問題のあるプロセスによりいかなる情報提供も拒否している。(中略)この手続き全体に関して異議を申し述べます」
「(調査費用として)1千万を超える金額をお支払しております。ですから、きちっとした内容を知る権利を持っていると考えます」
「廉潔性調査を行った調査会社のデューデリジェンス或いは廉潔性調査というのはなさったのでしょうか?」
議事録の中でNIKIの関係者は以下のように述べており、何か見えない理由があるのではないかとほのめかしている。
「何か違った動機があるのではないかと疑わざるをえない」
最後に、今後のことを示唆して、Dr.Ku氏は7月27日の会議終了時に「法的措置を取りましょう」と発言している。
また、NIKIは7月29日に長崎県IR推進課及び長崎県知事に対して要望書を提出しており、廉潔性調査についての不服申し立て、長崎県が委託している調査会社及びアドバイザーの廉潔性への疑問、そして誠意ある迅速で公平な回答がない場合、「次なる手段」に移行すると記載されている。
オシドリとNIKIが公募の「再選定」を模索しているとの話もあるが、現在の問題を考えると、両者またはどちらか1者が長崎県でのIR公募に引き続き参加したいかどうかはまだ分からない。様々な対立や疑念は、もし「再選定」が行われる場合においては、非の打ちどこがなく、慎重かつ完全に独立性があり、また全ての関係者から見てもそうであると思われる人・企業によって実施される必要があることを意味している。
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法的注記:当記事にある意見及び発言については、Oshidori International Development合同会社の発言を引用、またNIKI Chyau Fwu (Parkview) Groupが参加していた会議の議事録をIAGが確認したものから引用している。これらの内容はIAG JapanまたはInside Asian Gamingの意見を表すものではない。