昨年7月にIR実施法が成立し、関連する業界は鼻息を荒くしている。カジノを含む統合型リゾート施設は2025年までに稼働予定。時間はあるようでない。新たな職種となるカジノディーラーの養成も急務となる。そこで「日本カジノ学院大阪校」を訪ねてみた。
すでにIR開業へ向けたカウントダウンは始まっている。政府は今夏までにカジノ管理委員会を設置。2025年までにIR1号館をオープンしたい考えだ。
選定場所は3カ所。なかでも大阪は競馬に例えるならフライング気味に飛び出し、2025年の万国博覧会開催というフォローの風も受け、堂々と先頭を走っている。
候補地の「夢洲」はかつて五輪開催場所として埋め立てられた大阪湾に浮かぶ人工島のひとつ。その後、ほとんど手つかずの状態だったわけで負の遺産を好転させるという意味でも悪くないアイデアだと思う。
この流れを受け、国内では大手ゼネコン、大手電機メーカー、ホテル業界、さらにエンターテインメント業界などが相次いで「IRプロジェクト」を立ち上げ、目の色を変えている。カジノディーラーを養成する機関もその中のひとつ。特に大阪ではその動きが活発だ。
まさに雨後の筍。英語では雨上がりのマッシュルームと言うそうだが、大阪市内にはIRカフェをはじめ、レストラン、アミューズメントなど疑似体験型の施設が次々とオープンしている。そこで必要となってくるのが実際にゲームを仕切り、スムーズに運営するディーラーだ。
この日、訪れた「日本カジノ学院大阪校」は今後、ディーラーの需要が高まると判断され、2017年5月に開校した。本格的なディーラー養成機関としては西日本で最初、もちろん大阪では初となる。場所は四つ橋筋に面し、大阪メトロ「四ツ橋駅」からすぐ。若者やインバウンド客に人気のエリアでもある。
日本カジノ学院はもともとは2014年5月に東京・四谷で開校。現在は渋谷校を拠点に移している。すでに名古屋校、福岡校、札幌校と全国展開しており、今後は東京・池袋、横浜、さらに京都、神戸でも年内の開校を目指す。
「開校したころはほんとんど動きがない状態でしたが、昨年7月の法案成立から注目度が一気に高まってきました。大阪では市民向けのイベントが盛んに行われていますし、私たちもカジノの普及、ゲームの普及をサポートしていければ」と前川孝文校長(34)は話す。
大阪校の教室にはカード用のテーブル3台、ルーレット台が1台。さらに奥のVIP室にもカード用テーブルとルーレット台が置かれていた。この日は、ちょうど実戦を兼ねた「カジノゲーム大会」が開かれ、15人ほどの参加者はブラックジャック、バカラ、ポーカーのテーブルゲームに加え、ルーレットでの”賭け”を楽しみながら学んだ。余談ながら私も参加。ルーレット玉を投げ入れたが、これがなかなか難しかった。カードを配るなんてもってのほかだ。
そんななかで、カードを滑らかに配っていたディーラーの1人はすでに卒業生。現在は同校の講師を務めながらホテルのイベント、パーテ ィーなどで腕前を披露しており「今後は海外のカジノ施設で働き、最終的には日本に戻って活躍したい」と夢を語った。実際に学校側はマカオ、韓国、フィリピン、シンガポールなどの海外IR事業者との太いパイプがあり「マリーナベイ・サンズ」などからリクルートされている卒業生も少なくない。前川校長は「今後も卒業後のバックアップ態勢を強化したい」と話す。
授業のコースは4種類に分かれており、例えば最も人気がある「プレミアムコース」の場合は1回2時間30分の講義を計58回受講し、早ければ3カ月、平均半年で修了できるとのことだ。
授業料は130万円だが、卒業後に海外IR事業者のバックヤードの見学も含めた研修旅行もついており、過去にはマカオ、今年も2月に豪州ゴールドコースト、4月にラスベガスへ向かう予定になっている。またマネジメントクラスではカジノ依存症にも力を入れており、各国の対応を学んでもいる。
もっとも、日本カジノ学院大阪校では卒業生10人を含めて現在の入学者は80人程度。「ほとんどがサラリーマンの方ですが、学校全体ではOLや主婦。高校生や中学2年生もいます」とは前川校長。ディーラーの国内需要は最終的には数千人から1万人に上ると言われている。2004年に開校した老舗「日本カジノスクール」も昨年4月に大阪校を開校。今後ますます入学希望者は増えていきそうだ。