より多くの顧客を惹きつけ、維持するということになると、事業者はユニークかつ高品質なサービスの提供によって優位に立つことができる。
総じて、マカオのゲーミング事業者にとって2018年は良い年であった。カジノ収益は376億米ドルまで増え、前年から14%の増加となった。
しかしながら、アナリストは、この業界が2019年以降強い逆風に直面する可能性があることを警告している。ライセンス更新に関する不確実性、解決しない米中貿易摩擦そして習近平国家主席の汚職取り締まりの断続的な動きが、マカオのゲーミング収益に負の影響を及ぼし得る要因となっている。
しかし、1つ確実なことがある。それは以前、マカオが外国の事業者に門戸を開いた直後の10年間に我々が目撃したような著しい収益増加を今後10年間に見ることはないということだ。収益の潮が引いていく中、マカオのコンセッション保有6社が生き残りをかけて競争するのであれば強力な顧客フランチャイズを築き上げていかなければならない。全ての事業者はすでに大幅にコストを削減しており、将来バランスシートを強化する唯一の方法は、収益を増加させることしかないのである。
収益強化のもっとも重要な候補となる2つのターゲットは、「マス」と「プレミアム・マス」のセグメントである。この2つのグループに属する顧客を惹きつけ、維持する方法は、ユニークな顧客体験(CX)を提供することだ。
優れたCXを提供する
90%以上の企業が、第一にCXに基づいて競争をすると主張する一方で、彼らが卓越した顧客体験を提供していると感じる顧客の割合は一桁に過ぎない。この認識のずれが、提供者側に2つの欠点を告げている。1つは、「優れたCXを提供するという彼らの目標を実現することができていない」ということ、そして2つ目は、「彼らが顧客の声(VoC)を正確に評価していない」ということである。
優れたCXの設計は、主要顧客に提供されている現在のCXのマップから開始されるべきだ。このプロセスはサービス・ブループリンティングまたはカスタマージャーニーマッピングと呼ばれている。サービス・ブループリントはサービスロードマップとも言える。具体的かつ視覚的な資料で、どこでどのようにして顧客がサービスに接触するかを設計する。情報を含んだ視覚的な資料であり、顧客と企業の関係、そして顧客体験を非常に明瞭にしてくれる。
現状のブループリントが設計されると、経営陣はどのタッチポイント(提供者と顧客の接触地点)に修正が必要かを評価する必要がある。「 問題点」の修正後、経営陣は他社が簡単にまねできない方法で顧客により優れた価値を提供するタッチポイントの作成に注意を向けることができる。
CXを強化する全ての方法の中でも、ブループリントが最も効果的であると証明されている。現在マカオにある6つの大手カジ事業者ーのうちの3社がサービス・ブループリントを使用したことでプラスの効果を得ている。
VOCイニシアチブ
VoC(顧客の声)とは、商品やサービスに対する顧客の期待と体験からのフィードバックを意味する。VoCイニシアチブ(分析)がマカオの有名な施設のいくつかで断念されているのを見てきた。その理由は、「経営陣が、会社は顧客に最高のCXを提供していると思い込んでいる」、また、「顧客は、企業にCXへのフィードバックを求められたら気分を害する」と考えているためだ。しかし、それはまるで見当違いだ。
顧客体験の質を判断するのは顧客だけである。それゆえ、VoCイニシアチブは顧客体験をチェックするのに不可欠なのだ。典型的なVoCの方法には、コールセンターの記録、顧客満足度調査などの従来型の方法と、フォーカスグループ、そしてザルトマン・メタファー表出法(ZMET)による心理学的アプローチや顧客行動のデータ分析・予測へのAIの使用といった最新の革新的な方法が含まれる。
要約すると、CXは「マカオやアジアで成功する」そして「あまり成功しない」カジノ事業者の間で差別化の鍵となる重要なファクターだろう。前者に入ることを目指す企業は、サービス・ブループリンティングとVoCイニシアチブを行うことが求められる。