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2021 年 8月 IAG JAPAN 9 www.asgam.jp 安物買いの銭失い ベン・ブラシュク 編集長 あなたのフィードバックが必要です。 コメントは bb@asgam.comへ 送ってください。 社説 最 近、豪カジノ大手、クラウン・リゾーツに対して、ニ ューサウスウェールズ(NSW)州とビクトリア州の カジノライセンス保有に適格かどうかについての 調査が行われた。そこで明かされた衝撃の内容 が、規制関連予算を削減することの危険性を強調している。 7月初頭に放送された豪テレビ局の時事問題番組の中で、5人 のビクトリア州元ゲーミング検査官達が、クラウン・メルボルンの規 制を試みた当時の体験について詳しく語った。その中には、クラウ ンがあまりに大きな権力を持ち、事実上、自主規制というモデルを 主張したという見解などもあった。検査官たちによると、資金洗浄 疑惑を報告しようとするも、これまた上からの圧力で妨害されたと いう。 王立委員会中、資金洗浄、ゲーミング税そして責任あるギャンブ ルに関わるクラウンの行動が当然ながら深刻な警鐘を鳴らしてき たにもかかわらず、その体系的な問題の多くは同州が合理的な規 制を好んで、専門性というものから離れていったために悪化したと 言われている。 2012年、ビクトリア州ゲーミング規制委員会(Victorian Com- mission for Gambling Regulation)は、ビクトリア州責任あるア ルコール摂取(Responsible Alcohol Victoria)と合併し、両業界 の規制上の監視を担当する新機関、ビクトリア州ギャンブル・酒類 規制委員会(Victorian Commission for Gambling and Liquor Regulation:VCGLR)が設立された。 IAGの最近のインタビューの中で、ゲーミング規制担当者デイビ ッド・グリーン氏とピーター・コーヘン氏とが、酒類の規制はより複 雑で、故に利用可能な資源の大半を吸収する傾向にあるために、 そのような合併は常にゲーミング規制の部分を犠牲にすることに なるという見方を示していた。 困ったことに、そういった調整を行うのはビクトリア州に限ったこ とではなく、NSW州も南オーストラリア州も合理化こそ素晴らしい という考えで、ここ数年間に酒類とゲーミングとを合併させている。 話を聞いたある情報筋は、自治体内の過剰な部署数を削減する ことに熱心な多くの州政府が全セクターで包括的な規制モデルに シフトしていると指摘した。しかしながら、このモデルは専門家によ る規制が求められる特定の専門的な業界の存在を認めていない。 同情報筋は、ギャンブルは紛れもなくそのうちの1つだと話した。 一部政府がギャンブルを特例として認めることを拒んだ理由は はっきりとは分からないが、オーストラリアの政治家がどういった形 であれギャンブルと関わることを一般的に嫌がるということと関係 している可能性はある。ギャンブル観光が州の主な経済推進力とし て社会に広く受け入れられているネバダ州のような法域とは異な り、オーストラリアでの見方は、カジノ事業者が起訴されたなどとい うもの以外に、ギャンブルから良いニュースなど来ないというもの であるようだ。 残念ながら、これによってオーストラリアのゲーミング規制当局 の多くが極めて重要な経験や業界の知識を持たずにきてしまった。 ましてや「現場の人材」などいるはずもない。 クラウンがあまりに不適切な状態に陥ったのはこのような状況 下であり、ビクトリア州と西オーストラリア州で同社を監視する二つ の規制機関は、介入しなかったということで、気づけば非難の的と なってしまっている。 世界中の機関はこれを肝に銘じておくべきだろう。
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