Inside Asian Gaming
2021 年 3月 IAG JAPAN 9 www.asgam.jp 惨事続きの韓国 ベン・ブラシュク 編集長 あなたのフィードバックが必要です。 コメントは bb@asgam.comへ 送ってください。 社説 ア ジアのカジノ事業者が上り調子になり始めたか、ワク チンが全世界で普及し始めたことで、より良い未来に 向けて手筈を整えている中で、韓国では今なお懸念が 続いており、それには理由がある。 同国には済州島に8カ所、本土に9カ所と、計17カ所のカジノがあり、 そのうちの1つ、江原道の遠隔地にある江原ランドだけが、地元住民 のギャンブル利用を許可している。 残りの16カ所(うち、パラダイスとグランド・コリア・レジャーは市場 を席巻中)は、外国人専用として営業している。そのため国際観光や 来訪者の消費者心理のなすがままとなっている。 言うまでもなく、これら外国人専用の16カ所のカジノは新型コロ ナウイルス感染症と世界規模の国境閉鎖によって壊滅的な打撃を受 けており、パラダイスは2020年度に1億米ドル(約107億円)近い損失 を出したと、2月下旬に報告している。 しかし、気になる兆候は、新型コロナウイルス感染症の感染拡 大よりも前から存在していたのだ。ソウルと釜山での3カ所のカジノ に加え、仁川で旗艦施設のパラダイスシティを運営するパラダイス は、2017年に190億ウォン(約18億円)、2018年に210億5,000万ウ ォンの損失を計上していたが、2019年には149億6,000万ウォン( 約14億円)とかろうじて利益を上げた。その仁川の統合型リゾート も、2019年後半には2017年4月のオープン以来初の黒字を記録した が、その苦労の多くは新型コロナウイルス感染症のせいで今や帳消 しとなっている。 おそらくカジノが規制されているアジアのどの管轄区域よりも、韓 国は政治的逆風の影響を特に受けやすいことが証明されており、こ れこそが同国の事業者にとっての最大の懸念である。また、同国にと って最大の観光相手国である中国や日本と政治的に頻繁に対立して いることも、その懸念を払拭できない理由の1つだ。 2017年のTHAADミサイル問題では、北朝鮮からの脅威の拡大を 受け、韓国がTHAADミサイル発射装置の配備でアメリカと合意した ことで中国の逆鱗に触れ、中国からあらゆるツアーグループの渡航 を含む韓国への観光禁止が公式に発令された。 その結果、中国人観光客数は、2016年の810万人から2017年には 420万人と半減し、2019年までに600万人に回復したのみとなった。 済州島には、国内16カ所ある外国人専用カジノの半数があり、こ れまでは人気の観光地であったが、THAAD問題の影響で大打撃を受 けてからは、現在も逆風が吹いている。 そこに仁川の問題が加わった形だ。アジアの次なる大規模統合型 リゾートのハブとして長年注目されてきたパラダイス シティは、3件の プロジェクトのうち、実際に運営を開始した唯一の施設。これは今か ら4年前のことではあるが、残りの施設の運営開始目処は立っていな い。アメリカのトライバルカジノ事業者、モヒガン・ゲーミング&エンタ ーテインメントによると、16億米ドルのインスパイア・コリアの運営開 始に向けて取り組んでいるが、その建設を完了させるための地元優 良投資家からの最終資金の確保が難航しているという。 一方、シーザーズ・エンターテインメントは、1月に旧シーザーズ・コ リアのプロジェクトの全株式を売却したことをここ数週間で認めてお り、完全に撤退した模様だ。 かつて栄えた韓国のカジノ観光産業に待ち構えているのは、長い トンネルか。
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