Inside Asian Gaming
2021 年 2月 IAG JAPAN 9 www.asgam.jp たった一つが命取りに ベン・ブラシュク 編集長 あなたのフィードバックが必要です。 コメントは bb@asgam.comへ 送ってください。 社説 オ ーストラリアのクラウン・リゾーツに現在付き纏っている ライセンスと適性の問題から学んだことが一つあると すれば、それはコンプライアンスと、カジノフロア(そして 州内のパブとクラブも)およびその周辺の資金の流れを 念入りに監視することの重要性である。 しかし、ギャンブル関連企業が、法を破ろうとする者による搾取を同 じだけ受けやすい他の多くの企業とは異なる、より高い基準に縛られ ていることが多いという事実も、確固たるものにしている。 この社説では、クラウンのここ数年の出来事を完全に網羅し切れな いため、同社の状況にそれほど詳しく触れないが、この記事の執筆時 点で、同社は16億米ドル(約1,675億円)のクラウン・シドニー開発に向 けたニューサウスウェールズ州のカジノライセンス保有の適性につい て、同州政府による(官民の聴聞会を含む)調査の結果を待っていると ころであった。 この調査は当初、マカオのカジノ事業者であるメルコリゾーツ&エ ンターテインメントによるクラウン・リゾーツの株式19.99%の取得に 関する問題に焦点を当てる予定だったが、その取引が中止されたた め、代わりにアジアのジャンケットパートナーによるクラウン・メルボル ンでのマネーロンダリング疑惑に焦点を切り替えた。 これらの資金の流れが間違いなく汚れていたことを証明する具体 的な証拠はなければ起訴もなかったものの、上級管理職がクラウン・ リゾーツのジャンケットルームで行われていた巨額の現金デポジット や送金について知らなかったと証言していた。 また、資金が特定のク ラウングループの銀行口座を通じて、「おそらく」洗浄されていたことも 示唆された。 その証言によって、パトリシア・バーギン委員長はクラウンの社内 AML管理を「大失敗」と呼ぶに至っており、同時に、自社の経営陣が知ら ない場合、ビクトリア州のゲーミング規制当局がクラウン・メルボルン の建物内で起こる出来事をどう追跡できるというのかと疑問を呈した。 バーギン委員長は、調査後まもなく最終報告を提出することになっ ており、クラウンがその状態を確実に好転させるということになると、 同氏の要求がどれほど強引かはまだ定かではない。しかし、クラウン にとっての最悪のシナリオは、ニューサウスウェールズ州のカジノライ センスの喪失と、すでに規制当局が独自の調査を発表しているメルボ ルンおよびパースでも同様の措置が取られる可能性という、大手カジ ノ会社でも十分なほどの痛手を被ることであり、これは圧倒的に重い 代償となるだろう。 オーストラリアの最近の事件と比較してみると、同国の9つの金融機 関が、南米の麻薬カルテルによる5億豪ドルの資金洗浄を助長してい たことが判明した。この件では、オーストラリアの法執行機関が、これら の資金がカルテルから直接洗浄されたという具体的な証拠を公表し たが、当の金融機関が何らかの形で直接処罰されたことについては一 切触れられておらず、すぐに報じられなくなってしまった。 一方のクラウンは、元々が非常に少額らしい金額が同社の銀行口 座を経由して「おそらく」洗浄されたと仮定して、数十億ドル相当のライ センスを失う恐れに直面している。 クラウンが自ら認めたところによれば、国民と利害関係者の両方か ら期待される基準を満たすことができていない。しかし、このような法 律の問題ともなると、一つの判例がすべてに当てはまるわけではない ようである。
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