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2020 年 12月 IAG JAPAN 9 www.asgam.jp 社説 二歩進んで、一歩下がる ベン・ブラシュク 編集長 あなたのフィードバックが必要です。 コメントは bb@asgam.comへ 送ってください。 待 望のIR実施法成立から2年。現在、日本カジノ業界の 未来は今まで以上に暗くなっているようだ。 計画を軌道にのせるために何年もかかった官僚的形 式主義をついに克服したところ、新型コロナウイルス 感染症の拡大がもたらした金融不安、で以前一心不乱だった候補者 が疑いを持ち始めた。そして計画を軌道から外そうとしている反対派 が徐々に力を付けてきている。 横浜がそのいい例となっている。 林文子市長が横浜市はIR誘致を目指す方針を明らかにした2019 年8月に世界最大IR事業者の5つがすぐにも大阪への関心を捨てて、 代わりに日本で第2位の大都市に重点を置いた。 当時、ラスベガス・サンズ(LVS)は、同社がこれまで期待してきた投資 のリターンを実現するために横浜が最善の機会を与えてくれると述べ た。メルコリゾーツは「横浜ファースト」を宣言して、ローレンス・ホー会 長兼最高経営責任者はそれが「世界でも類を見ない最高のIRを横浜 市に実現する」と言った。 ウィン・リゾーツやギャラクシーエンターテインメントグループ、ゲン ティン・シンガポールもすぐに横浜を目指すことにして、後ほど国内会 社であるセガサミー・ホールディングスも先例に従った。 現時点ではその中からLVSやウィンの2社が規制についての不安や 現在彼らが行っている事業活動に集中する必要性などを理由として途 中辞退した。最近もう一社(ゲンティン・シンガポール)がためらいの兆 しを見せ始めたことで、横浜のIR誘致が危機に瀕している。 11月に住民投票の実施を求める市民団体「カジノの是非を決める 横浜市民の会」はおよそ20万人分の署名数を集め提出した。その20万 という署名が人口に占める割合はわずか6.6%でありながら、住民投 票条例制定の直接請求に必要な数の3倍である。 横浜市にとってこれは何を意味するのか?判断力が鋭いある方が言 うには、起こりうる可能性は高いものの、住民投票が行われた場合に は、多くの住民がIR開発に反対票を投じることはほぼ確実。 とは言うものの、市が諦めるとは限らない。まず第一に、最終的には 住民投票条例案を可決するのは市議会である。市議会はIR開発を支 持していることを考えると、反対の条例案を可決しない可能性はある。 2つ目に、住民投票が実施されて住民がIRに反対票を投じたとして も、市議会にはそれに従う義務は発生しない。投票に法的拘束力はな いから横浜市が誘致を断念するには市議会と林市長の一連のサポー トが必要となる。 それでも、提案IR投資者は横浜の未来の不透明さに関心せざるを 得ない。そして新型コロナウイルス感染症の拡大がもたらした遅延で 来年秋の市長選挙が10月のIR申請期間直前の危険なタイミングにな った。 IAGの取材では、横浜市の住民投票は早くても2月、遅くても春に実 施されるので、噂では3月から始まる事業者公募(RFP)を実施する時間 はそれほど残らないだろう。 投資額は100億米ドルを超えると予想されていることや東京が後発 でIR誘致を目指すかもしれないという噂等を考えると、横浜がどたん 場で断念する危険がある上で事業者がリソースを投入し続けるかどう かの問題は依然残る。

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