Inside Asian Gaming

2019 年 5月 IAG JAPAN 11 www.asgam.jp 社説 一段上へ ベン・ブラシュク 編集長 あなたのフィードバックが必要です。 コメントは bb@asgam.comへ 送ってください。 現 代の観光客の変化する性質についてのインサイト を得たいとしたならば、アジアのゲーミングおよび レジャー業界を見ればいい。 中国の富裕層や中流階級の影響拡大に象徴され ているだけでなく、その地域のすぐ向かいでも同様の現象が見られ るように、昨今の旅行者は、移動の簡単さや快適さから、ホテル客 室の質、外食の選択肢の多さ、そして全体的なゲスト体験に至るま で、全ての点においてかつてないほどに要求が高くなっている。 中国の社会経済的な成長を調査する米ウェブサイトのChi- naPowerは、2002年から2012年までの間に中国の中流階級は人 口の4%から31%へと爆発的に増え、4億2,000万人にまで増加し た。同様に2001年から2015年までの間に、中国の賃金は平均して 毎年11%上昇した。 マカオ、シンガポール、ラスベガスそしてさらにオーストラリアの ゲーミングやレジャー観光地にとって最も重要なのは、この層の旅 行での消費額がさらに大きな増加傾向にあることだ。ChinaPower によると、中国人が中国外で年間に消費する額は、2007年の100億 米ドルから2016年には2,500%増の2,600億米ドルに増加し、米国 民がその年に外国旅行で消費した1,600億米ドルを超える数字と なった。とりわけ、マカオは、中国大陸からの観光客が選ぶ訪問地 として香港に次いで2番目となった。 この地方の大手ゲーミング会社がその焦点を利益を多く生み出 すプレミアム・マスセグメントへと移しているという現象は、やはり 驚くべきことではない。彼らは積極的にこの成長するハイエンド消 費者の客層にターゲットを絞っており、そして考えているのはギャン ブルだけではない。 最近最も積極的な動きを見せているのは、ラスベガス・サンズ (LVS)に他ならない。マカオのコタイストリップの開拓者たちは、サ ンズコタイセントラルを数十億米ドルをかけて改装中であり、ザ・ ベネチアンとザ・パリジャンもアップグレードが行われている。 最近行われた2019年第1四半期業績報告の中で、LVSの社長兼 最高執行責任者、ロブ・ゴールドスタイン氏は、「マカオの様子は 2014年以降劇的に変化した。これこそがマスおよびプレミアムマス 主導型の市場だ。 我々には客室、スイート、小売、ゲーミングそしてエンターテイン メントの規模と質が揃っており、この環境の中で優位に立つことが できる。しかし、我々にとっては単に規模というものだけではない。我々 が本格展開すべきは質だ。だからこそ、今こうしている間にもザ・ ロンドナーとフォーシーズンズに1,300の新しいスイートを作ってい る。これらは、客の質の高いライフスタイルにコミットしている」と語 った。これはシンガポールのLVSが採用したものと同様の戦略で、ゴ ールドスタイン氏は同社が33億米ドルをかけて行うマリーナベイ・ サンズ(MBS)の拡張は、「そのセグメントだけに狙いを定めるという ことだ」と明かしている。 LVSだけがそれを行っているわけでもない。マカオでは、ギャラク シー・エンターテインメント・グループが最近、主に以前からのサー ビスラインナップに焦点を当てながら、15億香港ドルをかけてギャ ラクシー・マカオとスターウッドのアップグレードを行うことを発表 した。メルコリゾーツのローレンス・ホー会長兼CEOは、同社もプレミ アムマス顧客をターゲットにする意図を包み隠さず明かしている。 このターゲットには日本も含まれており、日本の最初のIRの一部を 形成するいずれのホテル開発においても、同国に今あるホテル客 室よりもはるかに大きな客室が作られることは確実だ。 しかし、最近の予想で中国の中流階級が2020年までに5億 5,000万人に到達すると言われていることを考えると、アジアのIR 事業者が水準を一段上げることに躍起になっているのは当然のこ とだ。

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