Inside Asian Gaming
2019 年 4月 IAG JAPAN 55 日本 エキスパートに聞く: 日本が目指す 新時代のMICE MICEって、いったい何だ?そしてなぜ、IRの 中核に据えられるほど親和性があるのか? さっそく、日本政府観光局(JNTO)のMICEプ ロモーション部長・川﨑悦子氏にレクチャー を受けた。昨年、北米の有力なMICE 業界 専門誌『Successful Meetings』で、「ミーテ ィング産業において最も影響力のある25名 2018」に、日本人として初めて選出された。 IAG: よろしくお願いします。はじめにMICEの定義から解説をお願いし ます。 川﨑悦子部長: 企業主体の会議(Meeting)、同じく企業などが行う報 奨・研修旅行(Incentive)、国際機関・団体、学会などが行う国際会議 (Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字 を使った造語です。4つのカテゴリーは全く違うものですが、企業や団体 が目的を持って行き先を決めるのが共通点。そこでこれらのビジネス イベントを総称してMICEと呼んでいるのです。 IAG: 世界のMICE市場の現状は? EK: 国際会議に限って言えば、2017年に日本で開催された会議は 414。国別の開催件数では第7位で、アジアでは1位です。ただし、中国 や韓国などアジア地域の追い上げが急で、1990年代には日本が約 50%を占めていたシェアが、近年は30%程度に低下しています。 IAG:競争が激化している、というわけですね。 EK: はい。2013年に出された『日本再興戦略』の中では、「2030年まで アジアNO.1を続け、国際会議開催国としての不動の地位を築く」とい う目標が掲げられています。 IAG: その競争で戦い抜く日本のセールスポイントは? EK: 日本のMICEには4つの強みがあります。1つめは独自の文化、ホス ピタリティ。多くの外国人の方に、日本の温かみを感じていただいてい ますね。2つめは安心できること。治安の良さと清潔さです。3つめは世 界をリードする知識、人材といった知的財産が集積していることでしょ う。4つめが日本人は質の高いサービスを提供できることです。例えば、 交通インフラの正確性。予定通り、というのが、MICEでのイベントをコ ーディネートするときには重要なことなのです。 IAG: 日本の地方都市では特色のあるMICEが開催されていると聞いた ことがあります。 EK: ユニーク・ヴェニューのことですね。例えば山形では酒と温泉に触 れるMICEが開かれています。京都・二条城では庭で会議関係者による バンケット(晩さん会)が用意されました。昨年5月には、宮崎神宮で参 道を開放して、1,000人規模の学術会議のレセプションパーティーが行 われました。 IAG: 海外の方には「非日常」が味わえる場所ですね。 EK: その通りです。会議の参加者の皆さんにONからOFFへ切り換えて もらえる。開放感のある場所でリラックスできれば、お互いのいい関係 が深まる効果が期待できます。 IAG:それでは理想のMICEのイメージを。 EK: まずは日本らしさを感じていただけるものですね。地方都市なら、 その地域ならではの文化遺産や特色もあります。 海外のリゾートにあるMICEは、エンターテインメントを含め1カ所です べてが完結します。それはそれで便利ですが、MICE施設がハブになっ て、そこに集まった人が夜、ご飯を食べに行った折に、地元のコミュニテ ィに触れ合ったり、その地域の歴史を感じてもらったり--日本にはそ んなものがあってもいいと考えています 。
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