批判にさらされているオーストラリアのカジノ企業クラウン・リゾーツに対する独立監査人の報告書は、継続企業の前提として同社の存続の可否に重大な不確実性があることを示している。
9月9日(木)に発表された同社の2021年の年次報告書に添付されたKPMGの報告書は、新型コロナウイルスに起因する潜在的な影響や、ビクトリア、パース、ニューサウスウェールズ(NSW)州の事業者のカジノライセンスを脅かす進行中の法的・規制的な問題に基づき、継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在すると結論付けている。
同社は現在、クラウン・メルボルンとクラウン・パースのライセンスを保持するための適性について、王立委員会の調査結果を待っている状態。またNSW州では、2月に規制当局がクラウン・シドニーのライセンスを保持するには同社が不適切であると判断したため、協議が続いている。
特に、KPMGは同社の財務会計を徹底的に調査した結果、不確実性の存在が判明。同社が将来予測に使用したデータや、「新型コロナの影響を受けた最近の赤字事業を考慮し、グループの過去の業績との関係や傾向の一貫性について、営業および資本支出の計画レベル」に存在しているようだ。
この評価では、「当社グループへの更なる/将来的な影響の可能性、推定される回復率、過去の取引水準への復帰の期待」だけでなく、「新型コロナを含む将来の不確実な事象による財務上の影響の予測、可能であれば法律・規制上の問題の潜在的な結果や契約条件の遵守に対する影響」が考慮された。
クラウンは、純負債額が現在8億9,290万豪ドル(約721億円)であると述べている。
特に、同社の年次報告書では3つのカジノライセンスの価値に関して減損は認められていないが、同社は「感度分析」の一環として、それぞれに減損の見積もりを実施。
クラウン・メルボルンのカジノライセンスが取り消された場合、クラウン・メルボルンのライセンスは4億9,020万豪ドル(約396億円)、カジノ運営の契約資産は1億800万豪ドル(約87億円)、前払いのカジノ税資産は4,390万豪ドル(約36億円)の減損が発生するとしている。
クラウン・パースのカジノライセンスが取り消された場合は4億4,040万豪ドル(約356億円)、クラウン・シドニーのライセンスが発行されなかった場合は1億豪ドル(約81億円)、そしてさらに、有形固定資産の減損の可能性もある。これらの資産減損の総額は約11億8,000万豪ドル(約954億円)になる。
同報告書には、最近NSW州とビクトリア州で行われた調査で発覚した、ガバナンス、コンプライアンス、責任あるゲーミング、金融犯罪リスクの管理における不備を解決するための「包括的な改善計画」を策定したことも記載されている。
同社は、取締役のジェーン・ハルトン氏、トニ・コルサノス氏、ナイジェル・モリソン氏、ブルース・カーター氏が署名した声明の中で、「改革をすでに大きく進めてきた」とコメント。
「当社の金融犯罪、コンプライアンス、責任あるゲーミングの任務を含む多くの重要な分野において、組織構造を見直し、能力を強化し、人員を増強した」。
「重要選手審査プロセスの導入による多くの顧客関係の終了、すべてのジャンケット事業の取り扱い停止、国際VIP事業の再構築(すべてのオフショアオフィスの閉鎖を含む)、(主要株主である)CPHとの間で結ばれていた情報共有契約の終了など、当社のビジネス慣行を変更した。また、実質的な文化改革プログラムも進行中だ」。
「大幅に刷新された取締役会とリーダーシップチームは、組織全体で期待される基準を設定することに尽力しており、当社の従業員は、関わり、エネルギー、責任をもってこの変更を受け入れている」。
「当社の評判を回復し、高品質の統合型リゾートを運営する責任ある企業として地域社会、規制当局、政府、投資家からの信頼を得るために、今後も努力してこれらを改革していく」。
クラウン・メルボルンの適性に関するビクトリア州王立委員会の調査結果は、10月15日までに言い渡される予定。