和歌山県が誘致を進めているIR(カジノを含む統合型リゾート)事業について、県議会は8日、優先権者候補となっているカナダの投資・運営会社、クレアベスト・グループから事業計画について説明を受け、質疑を行う「全員協議会」を県庁で開いた。地元紙の「わかやま新報」が伝えた。
全員協議会にはクレアベストの日本法人であるクレアベストニームベンチャーズ㈱の梶武司プロジェクトマネジャーらが出席。梶氏らは「初期投資は約4700億円、開業4年目の試算で雇用創出約1.4万人、目標来訪者数約1300万人(うち外国人約300万人)」と試算された和歌山IRの事業計画を説明した。
同紙によると、「県議からは、投資資金の確保や集客目標の達成を疑問視する意見の他、IR誘致に賛成の議員からも『総花的すぎてついていけない』などの発言があった」という。
総花的とは「すべての関係者に利益や恩恵を与えること」を意味し、かなり批判的な意味合いが強い言葉だ。クレアベスト側は、IR賛成の議員からもこのような手厳しい言葉が出るとは思ってもいなかったのではないか。先立って行われたRFPでは、同じく和歌山IR参入を目指していたサンシティグループの方が総合評価が高かった。しかし、サンシティが新型コロナによる先行きの不透明感などを理由に撤退し、次点のクレアベストが優先権者候補にはなったが、県の求めるレベルで運営出来るのかが懸念されているのであろう。県は6月の優先候補の発表にあたり、「今後はクレアベストと協力して区域整備計画の作成に専念するが、提案内容の更なるブラッシュアップと事業実施体制の強化などを求める」としていた。
同紙には「梶マネジャーは、『他のIR候補地との競争のため詳細は明らかにできない』とした上で、『県の力を借り、皆さまの知見を加えて(計画を)ブラッシュアップすれば実現できると話し、数値目標の裏付けなどは将来的に説明の機会を設けたい』とした」と書かれている。
クレアベストは、その計画と同社の力量をしっかりと示した上で、県側を納得させることが喫緊の課題であり、それが和歌山IRへの扉を開けて歩む新たなフェーズの第一歩となるだろう。
クレアベストニームベンチャーズは6月、開発と運営に携わるパートナーとして日本の「AMSEリゾーツジャパン」と仏カジノ大手「グループ・パルトゥーシュ」が加わったと発表している。