フィッチ・レーティングスの新たなレポートによると、クラウン・リゾーツの運営に関する一連の調査と、全国で進行中の金融犯罪調査が、オーストラリアのすべてのカジノ事業者にとってより広範囲な規制監視とコストの増加につながる可能性がある。
「投資家が知りたいこと:オーストラリアンゲーミング」と題され、6月25日(金)に発表されたそのレポートでは、クラウン周辺の新事実と新型コロナによる国際観光業への影響を踏まえ、オーストラリアのゲーミングシーンの状況を深く掘り下げている。
今年初めに大幅な企業変更が行われるまでNSWカジノのライセンスを保持するのは不適格であると見なされていたクラウンは、現在、ビクトリア州と西オーストラリア州で同時に2つの王立委員会の調査に直面しており、税金の支払いとプロブレムギャンブリングに関する懸念がすでに明るみとなっている。オーストラリア主要な事業者3社であるクラウン、スター・エンターテイメント・グループ、スカイシティー・エンターテイメント・グループもまた、AML(資金洗浄防止)及びテロ対策法(counter-terrorism legislation)のコンプライアンス違反の可能性に関して、マネーロンダリング防止監視機関AUSTRAC(豪州取引報告分析センター)に監視されている。
同社によると、事業者に課せられる可能性があるすべての罰則は、規制当局による更なる長期的な監視がほぼ確実に伴こととなり、それが彼らの最終損益に影響を及ぼすことになる。
レポートでは以下のように伝えている。「規制の監視とコンプライアンスシステムへの投資が増えそうな厳重な監視がされていることを考えると、我々はゲーミング事業者のコンプライアンスコストは上昇すると予想している。
事業者の一部の事業分野も停止を余儀なくされる可能性があり、それにより全体的な収益創出能力と利益率を弱める可能性がある。
広範囲な規制監視強化の為に、ゲーミング事業者は寄付金を増やす必要があると考えている。NSW調査からの推奨事項の1つは、特定のゲーミング監視官の創設であった。これは、主にクラウンとザ・スターにより資金提供されることになるだろう。」
さらに前向きな点として、フィッチは、オーストラリアのカジノが主に国内のゲーミングに依存していることを考えると、先日のジャンケット禁止により減少したVIP収益は、利益に重大な長期的影響を与えるとは予想していない。また、全国のすべてのゲーミング収益に占めるVIP収益の割合は、過去5年間で、2015年のVIP収益の34%から、2019年と2020年の両年で24%ちょうどまで大幅に減少したことにも注目している。
「ジャンケット事業の停止はVIP収益を縮小させるだろう」と同社は述べており、以下のように語った。「特に、事業者は中国のVIPらに対応するのが難しいと感じるだろう。というのも、中国はゲーミング活動の直接的な宣伝を禁止しており、ジャンケットは国際的なプレイを推進するために使用されているからである。我々は、中国への訪問者数の減少はVIPの収益に大きな影響を与えると考えている。
しかし、VIPは歴史的に見てもオーストラリアのゲーミング事業者の収益の中で、国内のマスマーケットゲーミングよりも少ない割合を占めており、安定している。事業者にとっては、これによってVIP収益の減少の影響が限定的となるはずだ。
VIP収益は元々変動性が高く、国内事業よりも利益率が低くなる。これは、利益の減少が売上高の減少と同レベルにはならないことを意味している。
国内のマスマーケットの実績は、2020年はパンデミック関連の制限により施設が閉鎖されたため低下したものの、過去数年間は安定している。ほとんどの施設は、2020年下半期に徐々に再開をし、その後健全な収益回復を報告しており、ソーシャルディスタンス制限下での運営時でさえも市場の回復力を強調している。
我々は、政府が新型コロナの拡大を抑制しようとする際、ゲーミング事業者は真っ先に閉鎖を求められるため、それらの制限措置が、VIP市場に輪をかけて大きな影響を与える他の制限よりも、短期的には彼らにより大きな影響を与えると予想している。」