和歌山県が誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の運営事業者公募に応じていた外資系2社のうち、「サンシティグループホールディングスジャパン」(東京)が辞退したことを受け、仁坂吉伸知事は18日の定例記者会見で「1社を選ぶかどうかということになったので、痛いなという感じがする」と苦渋の表情を浮かべた。県は残る「クレアベストニームベンチャーズ」(東京)について、選定委員会で継続審査し、その結果を公表する。当初、今年の春ごろとしていた優先権者の決定はここまでずれ込んだが、いよいよ結論が下されそうだ。
県が進めるIR事業者の選定手続きには外資系2社が参加し、一騎打ちとなっていたが、サンシティグループホールディングスジャパンが選定作業が大詰めを迎えた12日に辞退を表明し、関係者に衝撃を与えた。その理由として、同社は新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済の先行きが不透明なことや、日本のIR区域認定手続きが当初の予定より大幅に時間を要すると想定されることなどを挙げた。
今後、県はクレアベストニームベンチャーズについて、審査を継続するが、先行きは不透明だ。地元紙の紀伊民報によると、仁坂知事は同社が必ず事業者に選ばれるかどうかについては「国に提案する区域整備計画が合格する可能性が非常に低ければ、選ばないこともあるかもしれない」と注目発言をした。
一方「選ばないということは、とりあえずここ数年間、IR誘致は諦めたことになる。私はずっと推進をしている。これだけ大きな投資案件、雇用・所得拡大につながる案件はめったにない。和歌山の将来のためにチャンスは絶対生かした方がいい」とも述べた。
クレアベストニームベンチャーズはカナダに本社がある「クレアベスト・グループ」の日本法人。同グループはIR投資会社としてカナダ、アメリカ、チリなどでカジノ、リゾート開発に投資、運営する立場で関わっているが、その規模は決して大きくない。当初は北海道のIR参入を目指していたが、北海道のIR参入断念を受け、和歌山に変更していた。
県IR推進室は「今後のスケジュールに変更はありません」と強調。「残る1社を運営事業者として適しているかを引き続き審査し、選定方法、評価の過程を透明性を示す資料とともに公表する」と話している。優先権者にクレアベストと決まった場合は、区域整備計画を作成し、来年4月28日までに国に提出する。申請が認められれば、2026年春ごろの開業を目指していく。
国策のIR誘致を巡っては最終的に和歌山県の他に横浜市、大阪府・市、長崎県の計4地域が参加を表明。国は区域整備計画をもとに最大3カ所を選ぶ予定だ。各自治体とも作業は進んでおり、大阪府・市は米IR大手のMGMとオリックスとの共同体で確定。 長崎は5者から「カジノオーストリア・インターナショナル・ジャパン」「オシドリ・コンソーシアム」「NIKI&チャウフー」の3者に絞り込まれている。
また、横浜市はきのう17日、有力候補のひとつだったマカオの大手IR「ギャラクシーエンターテインメント・グループ」がコロナ禍を理由のひとつに挙げ、応募を見送ると発表した。今後はシンガポールの「ゲンティン・グループ」と香港に本社を置く「メルコリゾーツ&エンターテインメント」などに絞り込まれていくものとみられる。
果たして、和歌山県はどんな決断を下すのか。