4月12日、福岡のホテルニューオータニ博多にて、九州IR推進協議会(略称KIRCカーク)の発足式が開催された。カークは、九州地方知事会、九州各県議会議長会ならびに九州経済連合会をはじめとした九州の経済団体等から構成される団体であり、カークの会長には麻生泰(あそう ゆたか)氏が就任した。
同協議会は、IRを九州に誘致し、世界のMICE需要や観光インバウンドを九州に呼び込むことは九州経済ひいては日本経済が飛躍的に成長・発展していく千載一遇のチャンスであると位置づけ、①九州へのIR誘致、②IR需要の地元調達確保、③九州全域の魅力発信、の3つを実行すると表明した。
同協議会の会長に就任した麻生泰氏は、実業家。株式会社麻生(代表取締役会長)、麻生セメント株式会社代表取締役会長などを兼任する。また、福岡地域戦略協議会会長、九州経済連合会会長の席につき、2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会理事でもある。
麻生家は代々、政財界や皇室に身を置く人物が多く、第92代総理大臣、現副総理・財務大臣等の麻生太郎は麻生泰の兄である。また、高祖父にあたる大久保利通は、明治維新の功労者であり、初代内務卿(実質的な首相)を務めるなど、内閣制度発足前における明治政界の指導者。祖父の吉田茂は戦後間もない時期に計5期に渡り内閣総理大臣を務め、戦後日本の礎を築いた人物である。麻生太郎氏や麻生泰氏の妹にあたる麻生信子氏は寛仁親王殿下(上皇陛下の従弟)に嫁ぎ、寬仁親王妃信子殿下となった。このように麻生家は皇室とも深い関係にある。
麻生家は1872年に筑豊(福岡県)で炭鉱事業に踏み出し、株式会社麻生を創業してから発展を続けた。現在では医療・建設・不動産事業など101社(2020年)からなる麻生グループを築き上げており、グループ総売上高は4,147億円(2020年)にも上る。グループ経営委員長には麻生泰氏の息子である麻生巌(いわお)氏が就く。
麻生泰氏は1969年慶應義塾大学法学部を卒業。その後、英オックスフォード大を卒業し、商社に勤めた。1977年に麻生セメントに入社。当時の社長は兄の麻生太郎氏であったが、彼の政治家転身に伴い、1979年に社長に就任した。2013年には1996年より理事を務めていた九州経済連合会の会長に就任した。
九州経済連合会(以後、九経連)は1961(昭和36)年、当時の石炭から石油へのエネルギー革命の進展や急速な経済成長の中で、解決を迫られる多くの重要問題が山積し、個別企業の力ではどうにもならないという強い危機感を背景に、経団連、関西、中部に次いで全国で4番目の総合経済団体として設立され、その後、新しい地域経済の創造に向けて、自動車やIC産業の集積、九州自動車道や九州新幹線の開通、広域観光を振興する「九州観光推進機構」の設立などに取り組んできた歴史ある団体である。
「民間が率先して動きをつくり、実績をつくることが重要。意欲ある企業、法人、地域として成功事例をつくって、それを全国に伝え、九州から日本に元気を取り戻していく。これが『九州から日本を動かす』という九経連のミッションである」九経連のHPで麻生泰氏はそう述べている。
「2021年の九経連創立60周年に向けて、『九州将来ビジョン』の検討を進め、2030年までの九州のありたい姿、新たな成長への道筋と具体的なアクションプランを示していきたい」とも記されている。IRの誘致・整備・運営という長期スパンでの視点は、同協議会の10年先を見るビジョンと合致するところがある。
麻生泰会長はこう締め括っている。
「九州から日本を動かす気概をもって、新たな日常の中で次世代が明るい可能性を感じる地方創生モデルを九州から形成し、日本の再興と新たな成長に貢献していこうではありませんか」