大阪が今月初めにIR運営・設置事業者の追加公募受付を4月6日まで行うと発表したが、それは申請手順の公平性を保つという理由で行われているという。
大阪IR推進局は今週IAGに次のように語った。「今回の追加公募については、法律に基づいて行っている。元々、国の基本方針が出る前に応募を開始しており、その後出た基本方針や実施方針案の改訂などを見て参加を検討する企業に対して、公平性を守るための再公募である」。
しかし、疑問は残ったままである。:一体誰への公平性なのだろうか?
それは絶対に、MGMリゾーツ、また共同グループであり現在入札の意思を表明している(そして当初の大阪のRFP申請期間ですべての要件を満たしていた)唯一のコンソーシアムであるオリックスに対してではない。MGMは当然のことながら、この件に対するコメントを控えた。
MGMリゾーツは、共同グループであるオリックスとともに、大阪での当初の競合企業であったラスベガス・サンズ、ギャラクシー・エンターテインメント・グループ、ウィン・リゾーツ、メルコリゾーツ&エンターテインメント、ゲンティン・シンガポール、シーザーズが全て撤退した後に残った最後の事業者であった。これは、横浜が2019年半ばにIR事業候補者を承認した直後のことである。
それ以来、大阪に一貫して再尽力してきたMGMのビル・ホーンバックル最高経営責任者(CEO)は、つい最近の2月に、最終的な決断が下される際すぐにRFP書類を提出する準備は出来ていたと述べた。
新型コロナの影響を考慮した遅れは想定されていたが、MGMは、さらに多くの候補者をふるいにかけるという大阪の決定に多少不意を打たれたかもしれない。
大阪は「公平性」の事例を概説する際に、最近、独自のIR実施方針とりわけMICE施設完成の時期の変更を提示している。事業者はこれまで通り10万平方㍍のMICE施設を備える必要があるものの、それはIR開業時に2万平方㍍、開業後15年以内に6万平方㍍、最終的には10万平方㍍に拡張とし、段階的に展開可能であるとした。
しかし、他に辻褄の合う仮説もあがっている。1つは、追加公募への扉を開けるという大阪の決定は、「実際はMGMで決まっているのではないか」との声に対し、それへの反論を軸に展開しているということだ。より皮肉な仮説は、大阪がMGMとオリックスの両者が考え直しているという懸念に対処するために、競争力のある話題を作りたいと望んでいることを示唆している。あるいは、MGMサイドが大阪との厳しい交渉の準備をしていると見ているのかもしれない。日本のIRプロセスでは、何年にもわたり幾多の「動くゴールポスト」があった。候補事業者側が自身のゴールポスト(要求)を少しも動かそう(変更しよう)とはしないだろうと一体誰が断言できるのだろうか?
いずれにせよ、日本で2番目に人口の多い都市がRFPの提出を再度締め切り、まだ1人の申請者しか参加していないのは見栄えが悪いと言う人もいる。
状況を素直に読めば、大阪は新たな事業者の関心を望む正当な理由があったので、RFP提出期間を延長したに違いないと言うだろう。しかし実際には、誰がいる可能性があるだろうか?
大阪が提示した短い時間枠と、国が候補地と選ばれたパートナーからの申請の受付を開始する今年10月を考えると、新しい事業者が入札競争に参加するのに十分な時間はほとんどない。
大阪はその規模と数十億米ドルのIR投資の期待を考えると、世界最大の統合型リゾート事業者に手を伸ばしている。それは、利益を合理的に捉えかねないほんの一握りの企業である。実際、ラスベガス・サンズとウィン・リゾーツが原則的に市場から撤退したことを考えると、少なくともいまのところは、ゲンティン、ギャラクシー、メルコだけが残っている。
情報筋はIAGに、ゲンティン・シンガポールは現在横浜で非常に強力な位置にあり、したがって別の場所を探しているとは思えないと語った。メルコもその「横浜ファースト」の方針を公にしており、ラスベガス・サンズもウィンもどちらもその市場での競争相手として残っていないことで勢いづくだろう。
ギャラクシーはこの件に関しておおむね静観している。IAGは、同社は日本初のIR入札に関して国内外を問わず、愛知県を注意深く見守っている数少ない企業の1つであるとみている。
つまり、大阪市や府自体を含め、追加公募開始という大阪の決定によって、いったい誰が得をするのであろうか。
それは『誰にとっても公平』ではないようだ。