ラスベガス・サンズが2つの異なる投資グループとの間で合意に達し、ラスベガスにある全ての施設を62億5,000万米ドル(約6,690億円)で売却する。
同社は(アジア時間)水曜、アポロ・グローバル・マネジメントが管理するファンドが、ラスベガス事業の営業資産および負債を保有するLVS子会社を、現金10億5,000万米ドルとタームローンクレジット及び担保契約という形での売主側からの融資12億米ドルで取得することを発表した。同社が持つ、ザ・ベネチアンリゾート・ラスベガスやサンズ・エキスポ&コンベンションセンターなどの不動産資産はVICIプロパティーズが現金およそ40億米ドルで取得する。
ロブ・ゴールドスタイン会長兼CEOは声明の中で、ラスベガスを撤退することで、LVSは代わりに資源をアジアおよび新市場での高い成長の機会に集中していくと述べた。
同氏は、「この会社は成長に焦点を当てており、様々な場所に大きなチャンスが転がっている。アジアがこの会社の中心であることに変わりはなく、我々の意識の中心にはマカオとシンガポールでの開発がある。常に当社施設およびそれらのコミュニティに再投資する方法を模索している。また、国内でも潜在的な開発の機会があり、大きな資本投資がそれらの地域に大きな利益を与え、同時に当社にとって非常に高いリターンを生み出してもくれると考えている。
長年持ち続けてきたアジア事業への再投資という戦略および株主への利益還元が、この取引を通じて強化されるだろう」とコメントした。
62億5,000万米ドルという追加の資金を手に入れた今、重要な疑問がLVSはその新たな軍資金をどう活用するのかということだ。
リサーチレポートの中で、バーンスタインのヴィタリー・ウマンスキー氏、ケルシー・ヂゥー氏、ティエンジャオ・ユー氏そしてルイス・リー氏は、サンズ・チャイナが20億米ドルをかけて行うサンズコタイセントラルのザ・ロンドナー・マカオへの改装はすでに全額資金がまかなわれており、LVSがマカオ法人に持つ現在の70%という株式を大幅に増加できる可能性は低いと指摘した。
東京がIR誘致レースに参戦しない限り、日本もそのターゲットである可能性は低い。LVSは厳しくなる規制をめぐる懸念から2020年5月に日本から撤退した。
そして、一部の資金はシンガポールのマリーナベイ・サンズの33億米ドルをかけた拡張に使用される可能性はあるものの、LVSにとって最も可能性が高い新市場は、問題を抱えるカジノ事業者、クラウン・リゾーツの取得を通じて進出するオーストラリアであるかもしれない。
バーンスタインは、クラウンは「長期的にはサンズにとってピッタリの相手となり得る」と言う。「同社は、AML違反や管理上の問題を明かされたことで規制上の問題に直面しており、現在混乱の渦中にある。(CEOを含めた)複数の取締役および幹部が辞職し、同社は新たな所有者と経営陣を持つ時期に来ている。
しかしながら、サンズのマカオとシンガポールの事業、そしてマカオでの現在のジャンケットとの関係(急速に縮小してはいるが)が、問題を作り出す可能性がある。クラウンの取得が理にかなっているとなるかどうかは現時点では不透明だ」と述べた。