北海道では去る11月29日、鈴木直道知事が道議会にて「今回の区域認定への申請は見送る」としたことにより、事実上IR誘致合戦から撤退した。
鈴木知事は「熟慮の結果、IR誘致に挑戦したいとの思いに至った」が、「候補地は希少な動植物が生息する可能性が高く、限られた時間で環境への適切な配慮は不可能」とし、今回の区域認定への申請を見送るとした。ただ、知事は「IRは経済・社会に大きなインパクトを与え、持続的な発展に寄与するプロジェクトだ。きたるべき時に挑戦できるよう、所要の準備をしっかりと進めていく」と将来的な含みを持たせた。
これに対し、地元自治体や経済界からは多くの意見が出ている。
誘致を目指してきた苫小牧市の岩倉博文市長は「残念としか言いようがない。知事の判断については率直に『どうしてなのか』という思いがある」と述べた。また、苫小牧商工会議所は「大きな失意を感じる。最終段階ではIRに関する議論がなおざりになり、道議会の政争の具にされたとも感じている。今回の結果は非常に残念だが、IRを断念したという認識はなく、挑戦し続けたい」などとするコメントを発表。早期に誘致を表明するよう要望書を提出していた北海道経済連合会の真弓明彦会長は「大変残念です。北海道にとってIRは『食と観光で世界を相手に稼ぐ』上で起爆剤となるプロジェクトと考えていたところであり、これまで当会を含む8団体で知事等への要望を行なったり、『北海道のIRを考える会』を設立し道民理解促進などの取り組みを進めてきたところですが、今回見送りされることは期待していた北海道経済への様々な波及効果を考えると、大きな痛手であります」「我々としても誘致推進に向けて、再度、力を尽くしていきたいと思います」とコメントを出した。知事の決断を聞いた菅官房長官は「コメントは差し控える。北海道は豊かな自然と食文化を兼ね備えており、インバウンドも大きな可能性を持っている。引き続き観光先進地を目指し、取り組みを進めていくことを期待している」と述べた。
知事は、今月10日の道議会予算特別委員会の中で「交通や環境といった観点から候補地の検討を幅広く行う」「市やIR事業者の意向を聞き、その後、検討することになると思う」と述べている。
北海道IRに手を挙げていた事業者各社も今後の対応に追われている。