オーストラリアの多数の政治家が、週末に3つのメディアが報じた有名カジノリゾート、クラウンリゾーツとアジア犯罪組織とのつながりに関する疑惑を受けて、同カジノリゾートへの喚問を要求している。
有力紙The AgeとThe Sydney Morning Herald、そして時事問題を取り扱うテレビ番組60 Minutesの一連の報道では、クラウンによる中国人ハイローラー獲得への動きの中で、同社が「アジアで最も有力な組織犯罪集団」との繋がりを持つ少なくとも1社のアジアジャンケット事業者とビジネスを行なったいう疑惑が報じられた。
特に、「The Company」と呼ばれる犯罪組織が「クラウンに関係のある」銀行口座とジャンケットルームを使用して資金洗浄を行い、犯罪組織のメンバーがクラウンのメルボルンとパースのカジノにハイローラーを誘いこむことで報酬を受け取ったことが伝えられている。犯罪組織は違法薬物の取引にも関わっていると言われている。
報道を受けて、オーストラリアで最も大々的にギャンブル反対の活動を行っている無所属のアンドリュー・ウィルキー議員が最初に国会喚問を求め、「首相と野党党首が国会答弁で常識的な判断を下してくれることを願っている。これは小さなカジノに関する疑惑の範疇を大きく越えている。複数の法域、機関、国にまたがる問題だ。オーストラリア政府、そして国会が関心を持つべき大きな問題だ」と述べた。
ウィルキー氏はまた、豪カジノ業界全体へのより広い範囲の捜査も呼びかけている。クラウンはオーストラリア全土で4社あるカジノ事業者の1社で、他にスター・エンターテインメント・グループ、スカイシティ・エンターテインメント・グループそしてフェデラル・グループがある。
同氏は、「オーストラリアのカジノ業界にどれ程の文化的または体系的問題があるのか、国会喚問で扱うべき問題の1つだろう。しかし、たとえ他のカジノで問題がなくとも、クラウンは色々な意味でオーストラリアで最も象徴的なカジノであり、これらの疑惑は非常に深刻だ」と述べた。
ウィルキー氏の喚問要求に加わっている政治家は他に、無所属のジャッキー・ランビー下院議員と中央同盟のレベッカ・シャーキー議員がいる。
その間、ビクトリア州の元ゲーミング担当大臣、トニー・ロビンソン氏は今回の疑惑報道を受けて、ビクトリア州賭博および酒類規制委員会に対してクラウンの監視により多くの資源を割り当てるよう求めている。2016年末に中国大陸でギャンブルを宣伝したとしてクラウンリゾーツの従業員19人が逮捕された事件の捜査は従業員が上海刑務所から釈放されてから2年以上経った現在も続いている。
ロビンソン氏は、The Guardian紙に対して、「当局はクラウンを詳しく調べるための捜査権をこれだけの時間がたってもまだ行使していない。故にこの種の問題が浮上したことに驚きはない。この問題における規制当局の怠慢によって、犯罪組織を台頭させ、州に深刻な危険がもたらされた」と語った。
クラウン自体は、報道後も比較的目立った行動を起こしていないが、月曜に以下のような声明を出した。「クラウンのビジネス取引に関する様々な疑惑を報じた週末のメディア報道については注視している。クラウンは法的そして規制上の責任を真摯に受け止める」しかし「故意に従業員を中国での拘留または有罪判決の危険にさらしたという疑惑については否定する」
週末の報道が、カジノ業界内外でのマネーロンダリングのリスクに深刻な疑念を引き起こす一方で、Inside Asian Gamingはメディアの中で唯一、クラウンのジャンケット事業者の利用に関して報道が過度に脚色されていることについてコメントした。ジャンケットの利用はカジノ業界で広く受け入れられているだけでなく、世界中の大半のカジノリゾートのゲーミング事業者によって用いられている慣習である。