オーストラリアの大手メディア会社3社が合同で行なった調査によって、オーストラリアのカジノ事業者、クラウンリゾーツが、マネーロンダリング、薬物そして性的人身取引との繋がりが知られているアジアの組織犯罪集団とビジネスを行った疑惑が浮上している。
しかし、一部報道で使われた過剰な誇張表現やタブロイド紙の報道戦術に関しては深刻な問題が残されており、その中には世界中のカジノ事業者に広く利用されているジャンケットへの認識不足が含まれている。「オーストラリアの根底を揺さぶる」と言われたこの問題は、調査報道が誇張されていると感じたオーストラリアの視聴者によって昨夜Twitterで炎上する騒ぎとなった。業界を良く知る人間にとっては、過去に広く議論されてきていないまたは、あまり一般的でない、違法な業界の慣行などの内容はほとんど見られなかった。
日曜に、The Age、The Sydney Morning Herald、そして60 Minutesが伝えた一連の報道によると、クラウンは中国人ハイローラーを獲得する動きの中で、同社が「アジアで最も力のある組織犯罪集団」との繋がりを持つアジアのジャンケット事業者の少なくとも1社とビジネスを行なったという。
特に報道では「The Company」と呼ばれる犯罪集団が「クラウンに関係のある」銀行口座とジャンケットルームを使用して資金洗浄を行い、犯罪集団のメンバーがクラウンのメルボルンとパースのカジノにハイローラーを誘いこむことで報酬を受け取ったと伝えている。
60 Minutesは日曜夜に豪TV局で放送した「Crown Unmasked(クラウンの本性)」という番組の中で、「利益への強い欲望が傲慢な文化を後押しし、闇犯罪組織に繋がりを持つ人間と付き合うことを含むすべてが許されていただけでなく、推奨されていた」と主張した。
The Ageもまた、クラウンがメルボルンにある現地売春宿オーナーのサイモン・パン氏をエージェントとして利用し、同社のオーストラリアの施設にハイローラーたちを誘いこんでおり、パン氏の売春宿39 Topeは「繰り返し警察の強制捜査が行われ、2008年から少なくとも2015年まで性的人身売買捜査の対象とされていた。同時に売春宿の営業によってビクトリア州の売春法違反で中間労働者たちが大量に起訴された」と伝えている。
クラウンとの繋がりはかなり不確かであり、一部はあまりに不自然に見える。潜在的に対立するインタビューされる側が「The Company」や「Mr.Chinatown」といった怪しい名前を連呼し、放送には不吉な背景音楽がつけられていることで、組織犯罪またはAMLへの繋がりを示す根拠のはっきりした論点は失われていた。ストーリーは、一般的な業界慣行を過度に劇的に作り上げることで捻じ曲げられており、何度も同じ内容が報道され、経歴が都合よく見過ごされた様々な情報提供者にからの情報に依存している。昨夜60 Minutesがインタービューを行なった4人の主要な情報提供者の経歴は、2人がクラウンの元従業員、そしてもう一人が職権乱用で昨年解雇された元オーストラリア国境警備隊だったことが判明した。
最も注目すべき点が、カジノ事業者だけでなくジャンケット事業者も同様に行う一般的な活動をめぐる報道だ。その中にはプライベートジェットの利用に加えて他にも様々な滞在中の特典を提供することでハイローラーをクラウンに誘いこんでいるという「暴露」があった。そのような報道、特にクラウンの活動に否定的なイメージを持たせることを狙いにした報道は、ハイローラーに特定の施設でプレイするための動機を与えることは、彼らのコアビジネスの基本的な部分であり世界中のほとんどのカジノリゾートのゲーミング事業者が採用している手法だという事実を都合よく無視している。
例えば、クラウンが「エルメスのスカーフ」と「金のiPad」をVIP客に提供することが「暴露」された。これはカンタス航空が飛行機を頻繁に利用する客にそのような商品を提供するのと何ら変わりはない。
ある例では、60 Minutesはこのストーリーを追うためにマカオへと飛び、「クラウンの不誠実さを理解するために、マカオに行く必要があり…クラウンは(中国の賭博禁止)法を回避しようとしていた。同社は自社の従業員を使って大きな獲物を捉え、オーストラリアに連れてくるだけでなく、『ジャンケット事業者』と呼ばれるマカオのエージェントを雇ってその汚れたビジネスを行なっていた」と伝えた。
一般的な業界慣習を「汚れたビジネス」と呼ぶだけでなく、60 Minutesはオーストラリア、そして世界の他の地域の全ての大手カジノが客を呼び込むためにジャンケット事業者とつながっていることを伝えていない。
報道では、オーストラリアの国境警備への疑問も投げ掛けられており、2016年にマネーロンダリング疑惑でゴールドコーストの連邦捜査官が探し当てたカジノのハイローラー用のプライベートジェットの乗客の中に習近平国家主席のいとこがいたことを指摘している。しかしながら、なぜこれが特段問題にされているかの理由を伝えられた地域はなく、報道はその捜査後の起訴や結末を一切伝えていない。
ある段階で、60 Minutesは興奮してインタビューされている側にこのように聞いた。「地球上でもっとも力のある政治家の1人である習近平のいとこがオーストラリアのパスポートを持ってメルボルンに住んでいて、オーストラリアで誰もそのことを知らないといことがどうすれば起こり得るのか?」インタビューされた側はぼんやりと答えた。「それはすごい。中国、そして中国共産党がどう動いているかについてまだまだ多くを学ばなければならないことを示している」
今朝この問題を議論するインタビューの中で、60 Minutesのレポーターは、「カジノを運営するには、そして一部の人はカジノというのはお金を印刷するためのライセンスだと言っているが、そのためにはソーシャルライセンスが必要だ。NSWやビクトリアそしてWAの人々からの信頼が必要で、カジノを運営しているなら、ギャングや、国の安全に危険となる可能性のある人たちとビジネスを行っていないことを確実にするためにできることの全てをするということだ。現時点で人々も政府もその確信を持つことができない」と語った。
メディア団体たちは、今週を通じてクラウンの活動に関するさらなる暴露を発表することをそれぞれ約束している。