和歌山県が進めてきたIR(カジノを含む統合型リゾート施設)誘致計画は、4月20日の県議会で賛成を得られず、頓挫した。
計画を推進してきた仁坂吉伸知事は5月10日、「和歌山IR否決のその後」として県のHP上でメッセージを発信した。
「残念なことながら、(中略)これまで数年間準備してきた和歌山IRを進めることができなくなった」「投資額4700億円、毎年の県民所得10%アップという大型案件がとりあえずなくなってしまったのは和歌山にとっての痛手」と仁坂知事は述べている。
「議会で賛成、反対が分かれたわけだが、(中略)一旦決着はついたのだから、また皆で力を合わせて次なるチャンスを追求したらいいのではないか」
知事はそう呼び掛けている。
「ただ、議会の議論の中で、どう評価するかという判断の問題でなくて、事実ではないなあと思うこともあった」
知事がそう振り返るのは、議会でも議論の的となった貸付約束のことだ。
「和歌山IRの場合は、いろいろなプロジェクト造成が主として海外で行われたので、融資資金の集め方も海外流でした。と言うよりも海外でこれまでたくさんのカジノまたはIRを実現してきた方法で行うというのが事業者のクレアベストの提案でした。それはクレディ・スイスというこのIR分野ではこれまで多くのプロジェクトを金融面で支えてきた世界的大銀行が、『このプロジェクトは信頼できるので、融資機関をアレンジする十分な自信があります』と宣言したレターを発するという形でした。このレターは、『ハイリーコンフィデントレター』と言います。直訳すると、高い自信を持っていますというレターです。このプロジェクトが信用できないという人は『コミットメントレターは法的に拘束力があるので信頼できるが、ハイリーコンフィデントレターは法的拘束力がないので信頼できない』とその形式で当否を主張していたのですが、それは必ずしも正しくはありません」
「『ハイリーコンフィデントレター』を出したクレディ・スイスはその後、実際の融資期限までに、融資団のフォーメーションを決めて融資を実行させるわけですが、事業者のクレアベストを通じて行われたクレディ・スイスの説明によると、今まで多くのプロジェクトをこの方式で成功させてきたが、一件も失敗したことはないとのことで、その成功例を議会の特別委員会で議員に限り要回収資料で示していました。いつもはクレディ・スイスの実際の融資団の組成は実際の貸し付けが実行されるまでというペースのようですが、今回は、特に議会の信頼性の懸念もあったし、県議会で通った後は国の厳格な審査もあると思ったのか、クレディ・スイスの組成努力もずいぶん前倒しし、すでに出資や融資をすると表明した企業の中で金額限度も示して融資表明をした企業の金額の総和だけで、総投資事業額4700億円を上回っているという報告も県議会になされていました」
「こういうクレディ・スイスというアレンジ役のもとに実際に出してもよいと表明する融資企業の融資意図の表明方式を『レターオブインテント(LOI)=意向表明書』と言います。よく意向表明書などは当てにならないという人もいますが、『コミットメントレター』、『ハイリーコンフィデントレター』、『意向表明書』のいずれも、それぞれの中でも中味は様々で、この3つの手法によって決定的に法的信頼性が変わるわけではありません。法的信頼性はその中味次第です」
知事はそう説明した上で「私としてはようやく最後に出来上がってきた、クレアベストのチーム、経営者のマリオ・ホー氏、シーザーズ、クレディ・スイスは十分にいいメンバーだったと今でも思っています」と付け加えた。
最後に仁坂知事はこう述べている。
「(マリオ・ホー氏は)まだIRも、和歌山での投資も追求していこうという姿勢のようです。IRでないと、すなわちカジノの力を借りないと4700億円という規模の投資はまず無理だと思いますが、カジノ抜きなら、様々な法規制は不必要なわけですから、マリオ・ホー氏はもちろん、他の投資家に対しても、今回の失敗にめげず、和歌山の退潮を食い止めるため、投資誘致は進めていきたい思います」