フィリピンが絶好調で長期成長の波に乗っている。
フィリピンのランドベースカジノ市場は、1,875.4億比ペソ(約3,932億円)の総ゲーミング粗収益で(GGR)2018年を締めくくった。これは前年比22.9% 、そして2015年から2018年までの年平均成長率(CAGR)は20%のプラス成長となったことを示している。PAGCORが運営するカジノ(カジノフィリピ―ノ)のGGRが比較的緩やかな4%前後の成長率となった一方で、この著しい成長を大きく後押ししたのはエンターテインメントシティにあるカジノリゾートだった。ソレアリゾート&カジノ、シティー オブ ドリームス マニラ、オカダ マニラ、そしてリゾートワールド マニラは合計で26.9億米ドル以上の総GGRを達成し、前年からはほぼ30%の増加となった。
加えて、クラーク自由港とクラーク特別経済区もまた22.4%の成長を記録し、総GGRは1億6,420万米ドルに達したことで、マニラ以外での成長の勢いを主導した。
ザ・イノベーション・グループは、絶えず市場の状況とダイナミクスをモニターし続け、同国で多くのIR関連プロジェクトに関わってきた。フィリピン市場固有の競争優位性に関する概要は以下の通りだ。
1) ゲーミング税制
フィリピンの低いゲーミング税は、アジア太平洋地域で商業的に競争 力の高い状態を維持できる要因となっている。というのも事業者はより多くの財政資 源を、将来的にさらに大きな収益につながる顧客獲得や設備改善に 割り当てることができるからである。
2) 人材と人件費
同国にいる現地人材は、最もエンターテインメント性の高いホスピタリティ環境で働くことに情熱を持っている。加えて、英語は公用語の一つであり、同国の教育システムにおいて主要言語として使用されているため、トレーニングや開発セッションを効果的に行うことができる。同時に、フィリピンの人件費はASEAN諸国の中でも最も安い。専門家や中間管理職でさえも、フィリピンでの平均基本給はASEAN地域全体において最低水準となっており、競争力の高い営業利益率と投資リターンに貢献している。
3) 改善しつつあるインフラ
巨大な国内市場、魅力的な投資ファクター、そして観光を促進する自然環境の美しさを考えると、同国はインフラの改善と共にさらにいっそう繁栄する潜在力を持っている。日本、韓国そして中国などの国 々からの政府開発援助(ODA)によって、フィリピンは「インフラ黄金時代」を迎えており、1,600億米ドル(約17兆3,000億円)の投資による75の最重要プロジェクトが計画されている。フィリピンは、2022年までにその中の32のプロジェクトを完了させることを目指しており、ゲーミングを含む多くの産業のさらなる成長を効果的に後押しする。例えば、全長106kmのマニラ・クラーク鉄道計画は、2時間以上かかる両市間の移動時間をたった50分に短縮することを目指しており、クラーク地区における観光業の成長を増大させ、クラークに拠点を置くカジノ施設に利益をもたらすための大きなきっかけとなることが期待されている。同プロジェクトは2021年までの完成が予定されている。
その一方で、フィリピンゲーミング市場の成長と安定性に関する主な懸念は、政治的リスクと主要供給市場/国との間の地政学がもととなっている。我々の考えでは、政治的リスクが示しているのは 1) カジノゲーミング法案を通過させる政治的実現可能性、そして 2) 政治の風向きが劇的に変化する可能性があり、それによりIRがビジネスを行う能力に影響を与えることになる政治的不安定性だ。
現在のような国際的な大規模IRにとって、潜在的管轄地域を評価する上でますますその重要性を増しているもう一つの要素が、主要供給市場とそれに関連する地政学だ。地政学上の不安定性は、グロ ーバルビジネスに影響を与え、明らかに業績にとってマイナス要素となる。
我々は、フィリピンゲーミング市場の競争優位性は、長期的な結果に大きな影響を持ち続けるものであると考えており、同業界が持続可能な形で継続的に成長し、ますます増加する成長著しいこの地域の裕福な中間層をフルに活用し、国に利益をもたらす観光と関連する経済効果をさらに刺激し続けるための力を与えてくれると考えている。