ゲーミングライセンスの再入札プロセスの詳細に関してマカオ当局から音沙汰のないまま、カレンダーは2019年へと変わろうとしており、いつ詳細が知らされるのか、そしてそれがどのようなものになるのかについて急速に憶測が広がっている。
マカオ政府が、マカオの6つのゲーミング・コンセッション(営業権)とサブ・コンセッション(部分営業権)のための再入札プロセスの詳細をリリースすると公約した6カ月後、2018年の終わりにSARから出てきたビ ッグニュースは、まったくニュースがないというものだった。
11月中旬に行われたMGSサミットでのパネルセッションで、情報公開のタイムラインの見込みについてレポーターに圧力をかけられ、マカオゲーミング監察協調局のパオロ・マルティンズ・チャン局長は、その問題に関するたくさんの質問への明言を避け、 「皆さん、この質問に関して大変懸念しているようですが、関連情報は何もお伝え出来ません。もちろん、SAR(特別行政区)政府は決断を下す予定をしており、DICJもこの話し合いに参加する予定です」と述べるに留まった。
2日後、崔世安(さい せあん)マカオ特別行政区行政長官もまた同様に、再入札問題について、政府は2022年に期限切れとなるギャラクシー・エンターテインメント・グループ、サンズ・チャイナ、ウィン・マカオそしてメルコリゾーツのライセンスよりも早い2020年に期限切れを迎えるSJMホールディングスとMGMチャイナのライセンスにまだ「どう対処するかを検討中」とし、ほとんど情報を提供しなかった。
これにより、米調査会社のテルセイ・アドバイザリー・グループは、政府の計画に関する情報不足について深刻な懸念を伝える文書を発表した。
テルセイのブライアン・マックギル氏とアレク・カミングス氏は「ゲ ーミング・コンセッションの更新を取り囲む情報が不足していることにますます懸念を募らせている。
去年の施政方針演説で、崔長官は2018年中頃がこの問題に取り組む適切な時期であると発言した。さらに、昨年マカオ政府はゲーミング業界のコンセッションの更新について2つの調査を依頼し、その両方が2018年の第3四半期までに完了する予定だった。
過ぎている。これを前提として、現在の米中の地政学的緊張関係を考慮しながら、我々はこの状況に絶えず注目している」と述べた。
その全てが答えの見つからない疑問を抱かせる。政府による情報公開の遅れは本当に懸念材料なのか、最終的に詳細が明らかにされた時、再入札プロセスから何を期待できるのか?
マカオの法律事務所、CA Lawyersのパートナー弁護士ホセ・アルバレス氏によると、2020年3月31日まではSJMのコンセッションの期限が切れないことを考えると、単に遅れていると言うだけでは誤解を招いてしまうという。
「最初の入札が2001年11月1日に公表され、関心のある団体には提案書の提出にたった1カ月しか与えられなかったことを皆さんお忘れのようです。事前選択の決定はたった2カ月ほど後の2002年2月8日に公表されました」アルバレス氏はこう指摘する。
MdMEのカルロス・エドゥアルド・コエーリョ氏は、マカオ政府はまた、日本で採用される新たな法的枠組みを考察し分析するのを待っている可能性があることを指摘している。
「日本はマカオにとってこの地域で最大の競争相手になる可能性があると見られているため、政府は将来の自国の戦略を明らかにする前に静観するつもりかもしれない」と説明している。
しかしながら、さらに重大なことは、マカオのゲーミング法で認められているように、マカオ政府が単にSJMとMGMのコンセッションを2022年まで延長するという可能性である。これは、SJMとMGMの期限を残りのカジノと合わせるだけでなく、再入札プロセスを決定するまで当局には2年間の猶予を与えられることになる。
もしそうであれば、より核心を突いた質問はタイミングというよりも、再入札プロセスが最終的に始まった時にそれがどのようなものになるかということだ。
注目すべきなのは、既存のオペレーターの単純なライセンス更新は不可能であるということだ。というのも、マカオの賭博法の中でそのような決定を許可する規定はないからだ。
従って、公開入札は明白なシナリオであり、最低限の資格要件、入札者が公開を求められる情報、提出する提案書の内容、選定条件そしてそれらを定める条件を記載した入札プログラムのリリースによって開始されるであろう。
そして、 公開入札自体はその後、マカオの行政長官によって任命された特別委員会によって行われることになるであろう。
しかしながら、コエーリョ長官は、行政長官が「公開入札規則によ って決定された既存の規則に従う必要はない」、そして「新しい公開入札規則を定める可能性がある(そうなる可能性はかなり高い)」と説明している。
「以前の入札プログラムのほとんどの要件が新しい入札に移行するだろうと信じているが、政府は新しい要件を導入し、既存要件のいくつかに与えられている妥当性(特に将来的なコンセッション契約のもとでのコンセッション獲得者の義務)の変更を希望している可能性が高くなっている」と付け加えている。
ザ・イノベーション・グループのマイケル・ジュー氏は、6つ全てのオペレーターに財政面、社会面の両方でマカオの繁栄にどう貢献してきたか、そして今後それをどのように継続していけるのかを示すよう求める「本当の再入札」は理にかなっていると言う。
ジュー氏は「ゲーミング以外の施設、マスマーケットモデルそして中国人中心の顧客ベースよりも国際的な顧客ベースの開発を含むいくつかのアスペクトに隠された[多様性]により多くの焦点と注目が集まると信じている」と述べている。
アルバレスによると、真の再入札とは、全ての入札参加者にとって最も公平なシステムとして存在するものであり、既存の「ビッグ6」と新しい競争相手が同じ立場で主張することを認めるものだ。しかし、彼は「マーケットですでに営業し成功しているコンセッション保有者からの入札に大きな比重が与えられるべきだ」と提言している。その中にある公益につきものである理由というのは、波風を立てたくないというものだ。そのロジックは、「始まったものを変えるな」ということだと思う。
「過度に比重を置きたいということを無しにしても、既存の全てのオペレーターは、(他の企業/ビジネスマン同様)自社の利益を追求しているだけにも関わらず、マーケットにかなりの利益をもたらしていることが証明されている。
もし上述のオペレーターが再度コンセッションを与えられるのであれば、ここでカギとなるのは、オペレーターたちがその地方に付加価値をもたらし続けることを確かにするマカオ政府側の交渉人だろう」
12月の文書で、投資顧問会社バーンスタインは、マカオにある米国拠点の3つのコンセッション保有者に関して、マカオのコンセッション更新がラスベガス・サンズ、ウィン・リゾーツそしてMGMリゾーツの投資家の間で最も懸念されていることであると述べた。しかしアナリストたちもまたすぐに、それらの懸念の多く、特に既存のコンセッション保有者のいずれかがライセンスを失う可能性に関して、その不安を和らげる発言をしている。
「中国政府が米国のオペレーターからゲーミング・コンセッションを取り上げることを選択した場合、結果は、さらに多くの外国投資に国を開くという中国の狙いに対してかなりの逆効果になるだろう。そしてそのような行為を取り囲むネガティブPRは弊害をもたらすことになるだろう。米ゲーミング・オペレーターはまた、統合型リゾートのゲーミング以外の要素を閉鎖することでマカオでの全てのゲーミングインフラの閉鎖を選択することもできる(究極の選択)。結果として起こるのは、失業、税収の減少そして街の混沌とした環境だろう。マカオや中国政府がそれを求めているとは思えない」
バーンスタインは、ゲーミング・コンセッションとは無関係の土地のリース契約もまた彼らに有利に働くと付け加えている。
「政府はゲーミングエリア(エリア全体の面積のほんの小さな割合を占めるカジノフロアとテーブルのみ)の支配権を取り戻すことができるが、カジノフロア以外のエリア(ホテル、レストラン、化粧室、共用エリアなど)への干渉は出来ないだろう。それは、不動産オーナー(現在のコンセッション保有者)の協力なしでカジノを運営することは事実上不可能ということを意味する。
ゲーミング・オペレーターの土地のリース契約は2026年から2038年まで切れることはない(建物による)、しかしそれでさえも借主の選択で2049年まで延長可能である」
間違いなくこれからも残り続ける1つのファクターは、中国政府からのインプットのレベルと、それがマカオの政策方針にどのように影響する可能性があるのかというものだ。この点において意見は分かれたままだ。
米中の貿易関係が2018年末までヘッドラインを占拠し続ける中で、ザ・イノベーション・グループのジュー氏は中国がその力を誇示する可能性がかなり高いと見ている。
「アメリカよりも中国、香港、地元のコンセッション保有者が多くなっても驚かないだろう。少なくとも、現在の3-3のバランスを変えたいと思っている可能性はある」と状況を分析する。 法的な見方は若干異なる。MdMEのカルロス・エドゥアルド・コエ ーリョ氏は、「マカオの立法府と幹部の影響力の自主性や独立性を考えると、これが起こるとは予想してはいない」と言う。 同じく、アルバレスはSARが中国政府に相談を持ち掛ける可能性がある一方で、最終的な決定結局地元で下されると説明している。
「中華人民共和国の特別行政区として、マカオは自分たちの事情を動かす中でかなり高いレベルの自主性を享受している」と言う。「 再入札プロセスに関係する規定に基づいて、それに関するあらゆる決定はそのような自主性の範囲内で行われる」 バーンスタインは、再入札プロセスの完了後、マカオのゲーミング
業界がどのようなものになるかについて4つの可能性を述べている。
最も可能性が高いのは、既存の6社全てがコンセッションを更新する、ただし手数料や税は増額しての現状維持だ。
バーンスタインのアナリストによると、上記の中でかなり可能性の低いのは、手数料または税の増加無しというもので、マカオの現在の景気回復が突然つまずいた場合にのみ起こり得るシナリオである。
最も可能性が低いと考えられるのは、ビッグ6の誰にも新しいライセンスが発行されないというものだ。これは「実施が困難」であり、非常に否定的な投資環境を作り出してしまうだろう。
しかし、バーンスタインはまた、7つ目または8つ目のゲーミングライセンスの発行も可能性の低いオプションだと考えている。このオペレ ーターの追加というコンセプトに不利に働く要因として、「過多な利益相反」によって作り出される問題、それを実現するためにマカオのゲーミング法に求められる変更、そして激化する競争による現在の税レベルの引き上げへの圧力を挙げている。
皮肉にも、少なくともマカオの現職国会議員であるデイビス・フォン教授は、逆の立場を取り7つ目のコンセッション保有者の追加の可能性が高いと主張している一人で、2017年IAGに対して、「社会という見地から、マカオが観光とレジャーの世界の中心になることを支援できる人は誰でも歓迎する」と述べていた。
「それには単なる提案以上のものが必要になるであろう。彼らは、6社(の1社)には入っていないけれど、マカオが次のレベルに到達する手助けとなれるということを証明するために、知名度を上げ、それが出来るだけの背景または過去の実績があることを示す必要がある。
社会は、マカオがこの新しいステージに到達する為の手助けができる人は誰でも歓迎すると思う」とフォン教授は付け加えた。
それは、今でも答えの出ていないたくさんの疑問の1つだが、一つ確かなことは、それがどう展開しようとも、マカオのゲーミングライセンスの入札が、アジアのゲーミング業界の将来を形作ることになるということだ。